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「ちょいとティーブレイクでも挟むか」
六十八階層の掃討完了と併せ、切り出す。
迅速な潰滅、及び超音速での移動を繰り返し、はや四時間余り。
小休止こそ適宜設けたが、俺の腕輪型端末に同期させた三人の体内ナノマシンが表す数字を並べると、そろそろ本格的にパフォーマンスが落ち始める頃合。
つーか俺も単純作業の繰り返しに集中ダダ下がり。
やっぱ致命的に向いてないんだろうな。延々と続く反復行為ってヤツ。
「そーいや、ひとつ解せねぇんだが」
広げた四人掛けのテーブル。
隣にはケーキをホールで貪るリゼ、対面には天板に突っ伏し眠るヒルダ。
残る斜向かい。銃を分解清掃する五十鈴へと頬杖ついて話しかける。
「あの時は二丁しか鉄砲持ってなかったみたいだけどよ」
思い返すのは、嘗て軍艦島で起きたカタストロフ。
恐らく女怪達が俺の血に呼応したことで活性化し、ダンジョン全体の均衡を乱してしまった、ある種の人身事故。
「お前なら八尺様程度、二丁どころか一丁あれば独りでも斃せたろ」
五十鈴の銃技は頭数を増やすほどキレる。より正しいニュアンスで述べるなら、複数の銃を携えて初めて力量を引き出せる。
フォー・オブ・ア・カインド。上手く名付けたものだ。
役無しの
さりとて例え一丁きりであっても、難度六や難度七の三下をハジくには十分。自身へと『
難度に対し面積が狭い軍艦島の攻略なぞ、精々半日で熟せた筈。
「……あん時は待機命令が出とったと。目立つワケには行かんやったとよ」
「はー」
好きな時、好きなように動けんとは、やっぱ組織なんてロクなもんじゃねーな。
「自分で聞いたんだから、もう少し興味ある素振り見せなさいよ」
クリームを舐め取ったリゼに空返事への苦言を呈される。
そう仰られても、こちとら希代の正直者で御座いまして。
ついでに腹も減ったし。
「ひと口くれ」
「あーん」
あー。
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