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 つかつかと足音を奏で、前に出る五十鈴。

 一歩を踏み締める度、纏う空気が研ぎ澄まされ、張り詰めて行く。


「──ツーカード」


 四丁のうち、まず後ろ腰の二丁。

 銀のバレルに青薔薇を刻み、それぞれのグリップに♦︎ダイヤ❤︎ハートが彫り込まれたリボルバーを抜き放つ五十鈴。


 間髪容れずガンプレイへ移り──左右六発ずつの銃声を、ほぼ同時に轟かせた。


「『リロードツール』」


 ショートブーツで踏み付けた石畳が一枚、砕ける。


 八方へ躍る、燐光帯びた破片。

 強く瞬き、形を歪ませ、銃弾に成り変わった。


「餓え、渇き、狂いし禽獣よ」


 形質も口径も多彩な十種以上の弾頭。

 五十鈴の半径二メートル圏内に、述べ七十二。


「屍肉欲しくば、爪牙を熾せ」


 シリンダーが振り出され、遠心力で払い飛ぶ薬莢。

 返す刀、宙に散らばる弾丸を十二、直接チャンバーへと掬い取る。


「──スリーカード」


 次いで左脇腹のホルスター。♣︎クラブを擁する一丁が手中に加わった。


 流麗な銃捌きに織り混ざる、相当な達人の目も平然と置き去るだろうジャグリング。

 その動作に照準、発砲、装填の悉くが継ぎ目無く重なり、装弾数など雀の涙にも拘らずマズルフラッシュが瞬き続ける、機関銃も顔負けの連射速度。


 そんな一連のモーションには、しかし微塵の綻びも無い。

 とことんまでスタイリッシュを根底に据え、外連味を突き詰めた戦闘スタイル。


 まさしく極点の銃技。

 顔も、性格も、まるで似つかんが、そこら辺は母親の血を色濃く継いだ模様。


「──フォー・オブ・ア・カインド」


 三丁を二度ずつリロードし終えた直後、右脚をサマーソルトで蹴り上げた。


 脹脛の留め具が外れ、赤い空に躍り出る青薔薇。

 ♠︎スペードで飾られたグリップを掴み、真打ち来たれり四丁拳銃。


「『加速アクセル』『加速アクセル』『加速アクセル』『加速アクセル』──『アカシンゴウ』──『加速アクセル』!!」


 腕二本の人間では、まさしく文字通りに持て余す数のリボルバー。

 投げては持ち替え、射線を見もせず撃ち、撃ち尽くせば篭め直し、また持ち替える。


 ──それを二巡。石畳から仕立てた弾を、きっかり使い切る間際。

 おもむろに五十鈴がテンポを緩め、三秒足らずのソロライブは早々と幕引きへ移る。


「ショウ・ダウン」


 スペード、クラブ、ハート。

 空薬莢を排し、元通りの配置でホルスターに収めて行く。


 そして。最後となるダイヤを握るや否や、、一発だけ残っていた弾を撃ち放つ。


「ン」


 コンマ数ミリ、耳元を掠めた先で響き渡る獣の断末魔。

 振り返れば、俊足で以て当方へと迫り、大顎を閉じる間際だったクリーチャー。

 脳天直撃。割れた弾が体内で暴れて大惨事。


「ハハッ」


 上手く弾幕を掻い潜ったとでも思ってたんだろうな、コイツ。

 実際はラストの演出を決めるため、泳がされてたんだけれども。


「荼毘に付さらば、灰の色味は、みな同じ」


 深いのか深くないのか判断しかねる台詞で締め、四丁全て収め終える五十鈴。

 鼻を突く硝煙が、ステージに吹き込むドライアイスの如く、彼女を飾り立てていた。





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