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 首元のパーツを撫ぜ、左右にスライドさせてあったスカルマスクを閉じる。


「破損と新調を繰り返し、かれこれ二十八代目」

「四十三代目よ」


 フィーリングで浮かんだ数字を口遊んだところ、一瞬でリゼにバレた。

 これじゃ、まるで俺が適当な男みたいではありませんか。


「お前いちいち数えてたのかよ」

「んなワケないでしょ。フィーリングで浮かんだ数字を出しただけー」


 なんて適当な女だ。






「アンタ等、本当に来なくて良いのか?」


 リゼが繋げた真円の前で振り返り、その先に立つ三人を順繰りに見据える。


「フン。寧ろ、どうシて着いて行かネばならんノだ」


 高いフェンスの上に腰掛け、吐き捨てたウェイ

 曰く、一隊も組まず深層に赴くなど単なる自殺行為とのこと。

 俺達いつもやってるんですけど。


「貴様達が死地に踏ミ入るのは勝手ダが、酔狂に付キ合う気は無イ」


 左様で。


「オレとキョウは宇都宮方面に向かう」


 空間投影ディスプレイを手元に映し出したジャッカル女史が、指を滑らせつつ告げる。


「『死神』殿の働きで異界化が解かれたとは言え、依然カタストロフは続いている。ステージⅡ以上の進行度に於けるデータが希薄な実情を踏まえれば、現場待機こそ望ましい」


 いつ再び侵蝕が始まるかも分からん、と続く言葉尻。

 一理ある。つーか本来、俺達もそうすべきなのだろう。

 お断りだが。


「ただ。本心を述べるなら、速やかにダンジョン入りしたいのも事実。此処にハガネとシンゲンが居れば、君達のパーティに加わることも考えた」


 お。やっぱりか。

 暴走中の難度十ダンジョンとか滅多に拝めるモンじゃねぇし、よく分かりますとも。


 ──と、思ったけれど。どうも俺の思量とは別の意図による判断らしい。


「ステージⅣへの進行だけは、避けねば」

「あァ?」


 その口振りに、些かの引っ掛かりを感じた。


 異界化した空間をダンジョン内へと呑み込むステージⅣは、成程、危険極まる現象だ。

 起こる都度、地球の体積が目減りし、やがては致命的な崩壊を招くだろう大災害。


 しかしジャッカル女史の語調は、もっとこう、喫緊の脅威を指している風に聞こえた。


 まるで。一度でも到達を許せば、全てが終わってしまうかのような。


「ああ。この際だ、君達には教えておこう」


 知る者は殆ど居ないが。そう前置くジャッカル女史。

 それから一拍を挟んだ後、続いた提示には、少しばかり驚かされた。


「カタストロフは──ステージⅣで終わりじゃ、ない」





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