682
首元のパーツを撫ぜ、左右にスライドさせてあったスカルマスクを閉じる。
「破損と新調を繰り返し、かれこれ二十八代目」
「四十三代目よ」
フィーリングで浮かんだ数字を口遊んだところ、一瞬でリゼにバレた。
これじゃ、まるで俺が適当な男みたいではありませんか。
「お前いちいち数えてたのかよ」
「んなワケないでしょ。フィーリングで浮かんだ数字を出しただけー」
なんて適当な女だ。
「アンタ等、本当に来なくて良いのか?」
リゼが繋げた真円の前で振り返り、その先に立つ三人を順繰りに見据える。
「フン。寧ろ、どうシて着いて行かネばならんノだ」
高いフェンスの上に腰掛け、吐き捨てた
曰く、一隊も組まず深層に赴くなど単なる自殺行為とのこと。
俺達いつもやってるんですけど。
「貴様達が死地に踏ミ入るのは勝手ダが、酔狂に付キ合う気は無イ」
左様で。
「オレとキョウは宇都宮方面に向かう」
空間投影ディスプレイを手元に映し出したジャッカル女史が、指を滑らせつつ告げる。
「『死神』殿の働きで異界化が解かれたとは言え、依然カタストロフは続いている。ステージⅡ以上の進行度に於けるデータが希薄な実情を踏まえれば、現場待機こそ望ましい」
いつ再び侵蝕が始まるかも分からん、と続く言葉尻。
一理ある。つーか本来、俺達もそうすべきなのだろう。
お断りだが。
「ただ。本心を述べるなら、速やかにダンジョン入りしたいのも事実。此処にハガネとシンゲンが居れば、君達のパーティに加わることも考えた」
お。やっぱりか。
暴走中の難度十ダンジョンとか滅多に拝めるモンじゃねぇし、よく分かりますとも。
──と、思ったけれど。どうも俺の思量とは別の意図による判断らしい。
「ステージⅣへの進行だけは、避けねば」
「あァ?」
その口振りに、些かの引っ掛かりを感じた。
異界化した空間をダンジョン内へと呑み込むステージⅣは、成程、危険極まる現象だ。
起こる都度、地球の体積が目減りし、やがては致命的な崩壊を招くだろう大災害。
しかしジャッカル女史の語調は、もっとこう、喫緊の脅威を指している風に聞こえた。
まるで。一度でも到達を許せば、全てが終わってしまうかのような。
「ああ。この際だ、君達には教えておこう」
知る者は殆ど居ないが。そう前置くジャッカル女史。
それから一拍を挟んだ後、続いた提示には、少しばかり驚かされた。
「カタストロフは──ステージⅣで終わりじゃ、ない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます