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 一気呵成、地上の侵蝕及びクリーチャーの氾濫が立ち消えたことで、事態は騒然。

 何処かに連絡しながら血相変えて飛び出した役人、取り残された俺達。

 集めておいて指示も出さずフェードアウトとは、そそっかしい野郎だ。


 ま、兎にも角にも。


「よーし解散! あとは各自の判断を元に自由行動ってコトでオーケー?」

「オーケー!」

「ソんな道理が通ルと本気で思ってるノか、馬鹿共め」


 ほぼ条件反射でヒルダが賛意を示す一方、苦虫を噛み潰したが如し様相のウェイ

 俺達を射抜く双眸に浮かぶのは、あからさまな非難の色。


「責務を請けタからには、最後まデ果たせ。犬猿でも出来るコとだ」


 つまり出来なければ犬猿以下だと仰りたいワケか。言うじゃない。

 正論パンチやめてくれ。核弾頭とかより、よっぽど効く。


ウェイちゃんよぉ、そうカリカリしなさんなって。もう少しノッてこうぜ、な?」

「馴れ馴れシく肩を抱クな、坏蛋ファイダン!」


 空気を揺さぶる怒声、火の属性エレメンタルを纏った裏拳。

 ひらりと躱し、五十鈴の背後に。


「おー怖。短気は改めるべきだぜ、ちゃんと乳酸菌摂ってるかァ?」


 生真面目が高じてか、いちいちヒスっぽい女だ。正直一緒に住めねぇタイプ。

 そこら辺、リゼは愛嬌こそゼロでも気性そのものは穏やかな方で良かった。単にダウナーなだけとも言い換えられるが、なんだかんだ根の部分は令嬢気質だし。


「わばばばばばばばば」

「っと不味い」


 背丈が近いもんで、ついリゼにやるのと同じように抱き寄せてしまった。


 激しく痙攣、ヤバげな動きでブッ倒れる五十鈴。

 まだ第三種接近遭遇は早かったか。


「……あー」


 場を満たす居た堪れない空気。

 ともあれ。


「俺は那須殺生石異界に向かう」


 すぐに。誰が何を言おうと、この決定を覆す気は微塵も無い。

 縦しんば全人類が口を揃えて否定を叫ぼうとも、我が歩みはアンストッパブル。


「つーきーひーこー」


 いざ往かん、と足を踏み出す間際。フェンスに凭れ掛かったリゼが気だるく俺を呼ぶ。

 どったのセンセー。


「疲れた。休ませて」


 …………。


「出発は二時間後だ。同行の意思がある奴だけ、再度屋上に集合」

「ふむ。盛大な掌返しの気配を感じるぞ」


 顎先を撫ぜ、呟くジャッカル女史。

 鋭いな。流石は人類最高峰の知能の持ち主。


 尤も、頭良いばっかで基本ロクなこと仕出かさないタイプだけど。

 如何に演算性能がズバ抜けていようと、肝心なOSがバグ塗れ。困ったもんだ。


「やっぱ人間、真っ先に磨くべきは知性よか精神性だわな」

「どうして急に自分を省みたの?」


 こてん、と心底不思議そうに傾げるリゼ。

 そんな意図は毛頭ありませんが。





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