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「────はっ!?」
仰け反って白眼剥いて泡吹きながら痙攣してた五十鈴が意識を取り戻す。
良かった。電気ショックが効いたか。
「悪いなヒルダ。返すぞ、レールガン」
「意外と平気なんだね。これ、ちょっとした発電所くらいの電力は蓄えてるんだけど」
「アンタ達、念のために言っとくけど普通は死ぬわよ」
宙に浮かぶヒルダの傍らを衛星が如く回るレールガン。
やがて『
ただ、俺の識覚には触れてるし、そもそも既にタネの割れた手品ゆえ、面白くはない。
「うぅ……うち、一体……?」
「よ。いきなりブっ倒れたもんで心配したぜ」
ぼんやり天井を眺める五十鈴の視線へ割り込むように、顔を覗き込む。
揺らぐ眼差しに光が灯り、ピントが俺へと定まった。
「何もしねぇ内にワケも分からず死なれたら、流石に不完全燃焼どころの騒ぎじゃ──」
「かぺゅっ」
肺を押し潰し、無理矢理に絞ったような声。
ぱたた、と頰を打つ雫。
手の甲で拭う。鮮やかな青色。
再び五十鈴を見下ろせば、形容し難い有様で、口から血と譫言を垂れ流している。
…………。
「嘘だろセンセー」
「こんな塩梅かしら」
刃持たざるナイフを振るい、俺の足元に一線を刻んだリゼ。
併せ、満身創痍状態で辛うじて呼吸する五十鈴へと向き直り、同様に線引く。
「大体十五フィート。これ以上近付いたら、割と命に障る発作を起こすわ」
「マジか」
七回の瀕死と蘇生を繰り返し、算出した安全距離。
数字にヤード・ポンド法を使う理由は分からんが、兎にも角にも、このラインが文字通りの生命線って寸法。
ラインだけに生命線。距離だけに寸法。
あっはっは。
「つまんねぇんだよダボハゼがァッ!!」
「唐突にツキヒコがキレた。現代社会に立ち込める暗雲の象徴かな」
「暗雲の象徴と言うか物理的な厄災ね。やろうと思えば、アイツ一人で
「僕も出来るよ! やって見せようか、核融合とか!」
「やめなさい」
くそったれ。妙な流れになっちまった。
これでは五十鈴と戦おうにも、遠距離戦オンリーの縛りを設けねばならん。
いや待て。ガンナー相手にロングレンジ。それはそれで趣があるのではなかろうか。
「……んー」
などと考え込んでいたところ、思案顔を作ったヒルダが、ふよふよと五十鈴に近付く。
どったのセンセー。
「ねぇ素敵なお姉さん。ツキヒコと戦えそうかな?」
「たっ──!? む、無理、じぇったい無理! 同じ空間におるだけで精一杯ばい!」
身振り手振りで全霊の拒否を示す五十鈴。
そんな殺生な。今度はこっちが倒れるかも知れん。
「ふーん。そっかそっか」
よろめいた方へと先回りしていたリゼに支えられ、事なきを得る。
翻ってヒルダはと言えば、やけに大仰な仕草で二度三度、頷いて。
「じゃあ死ねよ。役立たず」
おもむろに翳した掌から──強烈な既視感の伴う極光と灼熱を、迸らせた。
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