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 担架で続々と運ばれる、日本最精鋭探索者シーカー(笑)の面々。


 御自慢の最強防具こと、部隊全員で揃いのクソダサジャケットもボロ布状態。

 戦術核の爆心地に立っていても無傷、みたいな触れ込みはどうしたよセンセー方。


「尤も核弾頭程度の熱量を引き合いに出されたところで、大した目安にゃならんが」


 あんな旧時代の玩具、対ダンジョン加工を施したところで高が知れてる。


 尋常の生物相手なら過剰とも呼べる火力を持つ兵器であることは確かなれど、奥へ奥へと往くにつれ道理を外れて行くクリーチャー達への有効打たり得るのは精々が五十番台階層か、ギリギリ六十番台階層あたりまで。

 加えて諸々の扱い難さを考えると、探索者シーカーの武装には明らかな不向き。

 そも攻撃なり移動なり、或いは両方なりが音速程度は余裕で超えて来る深層クラスの連中に、鈍重で小回りの利かない爆弾系はシンプルに相性が悪い。


 ──などと思案を並べるのにも飽き、改めて周りを見渡す。


 探索者支援協会日本本部B棟、地下五階。

 まるまるワンフロアぶち抜き、分厚い装甲板で余さず覆った、探索者シーカー用装備の稼動試験場。

 今年の春頃にも、一桁シングルランカー交流会に際し訪れた場所。


「あの時はウェイをボコった後、ハガネと小競り合って……他にも羽虫が何匹か居たような居なかったような……忘れた」


 軽く爪先で踏み込み、立ち幅跳びの要領で端へ寄る。


 縦横きっかり一マイルの幅を有する壁面。

 織り成すのは、山野を消し飛ばす出力にも耐える装甲板。


 厚さ約三メートル。サイズは畳二十枚分ほど。

 硬く粘り強く、自己修復機能を備えた特殊金属製。そいつを敷き詰めてある。


 半年前の俺では、素手じゃあ片腕と引き換えに一枚壊すのが精一杯だった代物。


「豪血──」


 動脈に灯る赤光。深く腰を落とし、握り締めた拳を引き絞る。

 息を吸って、吐いて。それを三度、繰り返して。


「――『深度・弐』――」


 霹靂瞬く速度で以て、一打を放つ。


 ハガネの剣技を筆頭、気に入ったものは片端から喰い取り、我が五体へと最適化させた上で組み込んだ無数の術理。

 最早いつ、どこで奪ったのか覚えていない技も多いが、まあ些事だ。


 模倣の域など初見の時点で過ぎている。

 リファインが済めば既に俺自身の技巧。出涸らしのルーツになど一文の価値も非ず。


「あーらら」


 肘まで埋まった、の右腕を引き抜く。


 前と違い、女隷を纏ってはいるものの、強度と技術の躍進は歴然。

 その証明──ほぼ壁面全域に奔った蜘蛛の巣状の亀裂を見て、くつくつと笑う。


「成程な。瓦割りに勤しむ格闘家の気持ちが、少しだけ分かった気がするぜ」

「ねえリゼ。ツキヒコが何か言ってるよ」

「あたおか」


 やかましいですよ君達。





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