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 ──沈黙部隊。


 書類上の正式名称は忘れたが、世間一般に於いては大体このように呼ばれている。


 各ダンジョン大国が擁する対カタストロフ戦力。日本に於けるそれ。

 防衛省直轄だかの、しかし自衛隊なんかともまた異なる組織らしい。そこら辺よく知らん。あまり興味も無い。


 編成は隊員六十人、隊長六人の述べ六十六人。あとは専用の支援部隊が幾つか。

 本隊の全員が国選探索者シーカー。累計三期以上のDランキング入りが任命条件とか。


 俺もリゼもランカーになったのは前期からゆえ、述べ二期目。まだ満たしていない。

 尤も、満たしたところで入隊を希望するかと問われれば、即断でノーと返すが。


 ……まあ簡明に纏めるなら、凄腕が集められたナイスな集団だって話。

 そいつ等とドンパチり合えると聞き、此度の依頼に馳せ参じた次第。


 なのだが。


「ツキヒコ! 僕飽きた! 原宿か渋谷までナンパに行こう!」

「ここ栃木だぞ」


 暇だから着いて来たい、と最終的には床をのたうち回るレベルで盛大に駄々こねておいて、なんとも厚顔無恥な台詞を叫ぶヒルダ。


 そのエロい尻の下には、揃いのエンブレムと装備に身を包んだ輩が十数人。

 全員もれなく失神中。或いは半死半生。

 視えず聴こえずのレールガン掃射を受けた、尊い犠牲者達だ。


「クアトロフォルマッジとペパロニピザとテリヤキチキンと……あ、飲み物はドクペで」


 ふと他所に目を遣れば、千鳥プラヴァを弄びつつピザ屋に電話を入れるリゼ。

 だだっ広い試験場の其処彼処に倒れる奴等の大半は、アイツが三秒でノしてしまった。

 器用にも幽体だけ斬ったため、犠牲者達のガワは無傷。中身は恐らくズタボロ。


 で。


「参るぜ……」


 指を鳴らす。

 うっかり加減を誤り、落命させた輩共の死を無かったことにする。ざっと十人。


 本来なら殺し殺されの爪痕を差し替えるなど流儀に反するが、正味、先の応酬は戦闘と呼ぶのも烏滸がましい一方的な蹂躙だった。

 なのでどーでもいい。拘るにも値せん。


「勘弁してくれ」


 盛大な溜息。

 軽く殴っただけだぞ。話が違う。


「いくらなんでも弱過ぎる」


 総勢六十六人中、二桁ダブルランカーだとか宣ってた隊長三人含む、およそ五十人を左見右見。

 歯応え皆無。牛乳に小一時間浸かったシリアルより酷い。


 徒党を組んで尚、ウェイあたりの方が十倍はマシな体たらく。

 そう言えば奴さん、あれでも一桁シングルだったわ。ハガネやシンゲンとの落差がデカ過ぎて忘れてた。ちゃんと強かったんだなアイツ。


 …………。

 兎にも角にも。


「ちょっとした詐欺だろ、オイ」





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