653・閑話37






 ──嘗て。自身の生まれた世界を喰らい尽くしたバケモノが居た。


 ──それだけでは飽き足らず、バケモノは数多の世界を腹に収め、己が糧とした。


 ──三千世界を一片残らず平らげるまで、バケモノは止まらない。


 ──決して癒せぬ飢えを、満たすために。






 ──世界を移る度、バケモノは新たな餌場に種を撒き、育み、そして刈り取る。


 ──それは謂わば牧畜であり、農業であり、鏖殺である。






 ──バケモノは待っている。


 ──この世界の支配者を気取る家畜達がダンジョンと呼ぶ、既に芽吹いた種の結実を。






 ──バケモノは待っている。


 ──世界を飾り、装うに足る、蒼い器の完成を。






 ──バケモノは待っている。


 ──この世界が食卓へと並ぶ、饗宴の日を。






 ──引鉄に、指先を這わせながら。





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