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荒々しく凍てた地表を蹴り付けるように、彼が俺の眼前へと立つ。
〈なんやねんコラ、無駄にデカい図体しくさってからに〉
肌が死人の色であること以外、俄かに氷像とは信じ難い、あまりにもリアルな生命感。
これほどまでの存在をハンドメイド出来るとは、フォーマルハウトに対する評価を改めねばなるまい。
〈首いわすやろが。屈め屈め〉
メディア露出を酷く嫌うタチで、生前の映像記録などは面相を覆い隠したものが大半。
と言うか、ほぼ全てそう。
故に、フェリパ・フェレスにも劣らぬだろう、その絶大な知名度とは裏腹、素顔を知る人間は少ない。殆ど居ない。
この情報化社会に於いて、ある種の異端とすら称せるだろうイレギュラー。
──事象革命黎明期の英雄。
──人類初の不老効果持ちスキル習得者。
──Dランキング初代一位。
──世界最強の
「斬ヶ嶺、鳳慈」
〈おーん? なんやジブン、ウチのファンかいな。先に言うとくけどもサインはNGやで。一人相手にしたら僕も私もってワイワイ群がるからなぁ〉
芸能人気取りかよ。群がるも何も、ここには俺含めて四人しか居ないんだが。
そもそも別にサインは要らん。間違い無くファンではあるけれど。
「……は? 斬ヶ嶺鳳慈?」
と。幽体化したまま、鼓膜を介さず直に脳へ響く声でリゼが呟く。
素顔同様、あまり知られていない事情を存ぜぬ身であれば、至極当然と言える疑問を。
「その女が?」
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