613・閑話34






 巨星鏤む夜天が照らせし地平を跋扈す竜達を統べる女王、絶凍竜妃フォーマルハウト。

 九百九十九に及ぶダンジョン、延いて必然的に同数が存在するダンジョンボスの内でも僅か五種が確認されているのみである、珍種中の珍種──『超過種』の一体。


 原則的にクリーチャーとは、産まれた階層の数字に応じ、出力に大雑把な上限を有す。

 その水準を明白に逸脱した、他とは異なる位置に立つ番外。


 故、超過種はリポップの都度に可及的速やかな駆除が執り行われる。

 仮に十全な力を取り戻してしまった場合、五種いずれもが討伐不可能指定クリーチャー達に準ずる脅威となるからだ。


 中でも絶凍竜妃フォーマルハウトは、全盛の栄華など見る影も無く弱り果ててすら、時に対カタストロフ専用戦力が駆り出されるほどの要警戒対象。


 何故なら彼女は最強の氷竜にして、唯一の人竜。


 氷とは静止。静止とは死。

 人竜とは、人の因子を備え、人を理解した竜。


 即ち、フォーマルハウトは──






 ──己が殺めた死人を、己を殺めた死人を、冷たい下僕と成し、従える。





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