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千々に砕けた無数の破片が、風に巻かれる粉雪の如く舞う。
「この子は転生刀」
燐光を照り返し、螺旋を描き、ひたぶるに集う。
「折れて初めて、戦いに敗れて初めて、真価を遂げる」
蒐まる先は、空となった鎺。
ガラスの擦れ合いに似た音を響かせ、新たな刀身を形成して行く。
「なのに肝心要な、わたしの刀を折れる奴が居なくてね」
身の丈に迫る野太刀から、打刀ほどに。
皆焼の乱れ刃が見事と言う他無い、先程までとは全く異なる、至極真っ当な姿の刀。
「シンゲンとの私闘はキョウに止められてる。リシュリウは本体じゃあ、わたしの前に現れない。凡次郎は死んでしまった。硝子は、わたしを殺す気で向かって来られない」
つらつら述べ立て、辟易混じり肩をすくめるハガネ。
けれど一転、機嫌良く口の端を吊り上げる。
「だから本当に、ありがとう♪」
なんとも薄っぺらい謝辞だ。
転生刀の仕様とやらは兎も角、刀を折られたこと自体は腹に据え兼ねてるんだろ。
目元と口元、引き攣ってるぞ。
「お礼に見せてあげる。妃陽丸の本当の能力」
「ほう、そりゃ楽しみ──」
虚空目掛け、軽く振り下ろされた一刀。
俺に届くどころか、切っ尖すら明後日だった、攻撃などと呼べよう筈も無い、単なる素振り。
にも拘らず──袈裟懸けに、身体を両断された。
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