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「ふふふふふ。おみごと、おみごと」
何やら既視感を覚えるシチュエーション。
はてさて。前にも、こんな感じで生首と言葉を交わしたことがあったような。
「ああ。フォーマルハウトの時か」
…………。
しかし難度八、いや難度九のダンジョンボスをも遥かに超えるスペックの人形、ね。
成程。細かい理屈は置いといて、差し当たりひとつ得心が行った。
「道理でリゼより上位なワケだ」
恐らく、いや間違い無く、これ一体きりということはあるまい。
仮に複数の人形を使い、幾つもの高難度ダンジョンを同時侵攻し続けられるのなら、あの馬鹿げた点数も頷ける。
……寧ろ逆に、初代Dランキング一位の斬ヶ嶺鳳慈こそ、どうやってコイツの上を行ってたんだよ。
流石は原点にして頂点。俺が唯一憧れた男。
灰とも塵ともつかない屑と成り、脚を欠いた胴が、ぐしゃりと臥す。
「なかなか、ゆかいな、ひととき、でした」
化け物めいて美しい、けれど少しでも視線を逸らせば形貌を忘れるほど印象の薄い顔に、亀裂が伝い始める。
「あなたを、ころせなかった、のは、ざんねん、ですが……つぎの、きかい、と、いうこと、で」
唯一、形を留めた黒剣が、陽炎のように姿を消した。
真なる主、即ち本体の元へと帰ったのだろう。
「さいごに。ようしきび、を、ひとつ」
──かちり。
やけに軽く、そんな音が鳴り渡る。
「ふふふふふ」
かんばせの罅割れから、燐光が覗く。
「また、まみえるひ、まで、ごきげんよう」
燐光は瞬く間、影すら払う極光へと膨れ上がり──そして、爆ぜる。
「すべての、こんせき、は、じどうてき、に、しょうきょ、されます」
陸で放てば国が失せよう『破界』をも凌ぐエネルギー。
跡形残さず、ネジ一本まで粉微塵に消し飛ぶタンカー。
迸る熱界雷が、空と海を灼いた。
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