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 世界に生まれ落ちてより二十二年余の大半を、凪いだ退屈と共に過ごしてきた。


 その間。誰かを殺めても構わないと切って捨てたことは、いくらでもある。

 が。ハッキリ殺すと断じたことは、あまり無い。もしかしたら一度も無いかも知れん。


 理由を問われれば、生かそうが殺そうが、どっちだって良かったからだ。

 生殺与奪に頓着するほど、他者に関心が無かったからだ。


 ──故にこそ。自分自身、些か驚きを禁じ得ない。


 俺もリゼも、クリーチャー相手とは言え、散々に命を奪い続けてきた人種。

 然らば、奪われ嬲られ踏み躙られた末の、尊厳の欠片すら残らぬ最期こそ妥当。

 そう思ってた。そう思ってる筈だった。


 ──なのに。俺は今、リゼを殺そうとした目の前の女を、肉と骨の違いも分からなくなるまで叩き潰したくて仕方ない。


 どうやら俺は、己の目分量で線引きしていた塩梅よりも遥かに強く、深く、あの愛嬌皆無なグータラのことが好きだったらしい。


 閑話休題。


「死ね」


 音を置き去り、残像も掻き消える、神速の貫手。

 先の意趣返しに心臓を狙った、一切の遊びを除いた一撃。


「あら。あら、あら、あら、あら」


 色さえ抜け落ちるほど圧縮された刹那。

 無防備に立つ白い女が、さらりと髪をかき上げる。


 そして。纏刀赫夜の鋭利な指先が届き、女の着る真っ白なスーツごと、胸を抉り裂く間際。






「いがいと、もろいの、ですね」


 俺の五体は、バラバラに切り刻まれていた。





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