546・閑話28






 ──手繰られる。


 ──手繰られる。


 深海のような、宇宙のような。

 底知れぬ闇、果て知れぬ無明を揺蕩う、朧めいた魂。


 そこに、微かな意識が宿り始める。


 ──手繰られる。


 ──手繰られる。


 引き寄せるのは、血肉のカケラ。

 現世に遺した、還り着くための道標。


 ──手繰られる。


 ──手繰られる。


 未だ目は開かない。

 未だ耳は聴こえない。

 未だ声は紡げない。

 未だ身体は取り戻せていない。


 ──手繰られる。


 ──手繰られる。


 けれど。


 ──手繰られる。


 ──手繰られる。






 目醒めの時まで、そう遠くはない。





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