541・Rize






 流石に、困惑が勝った。


「えぇ……」


 空間投影ディスプレイを改めて眇める。

 けれど記された名は、何度見ても私のもの。


 ──Dランキング二位。


 この制度の設立以来、斬ヶ嶺鳳慈とリシュリウ・ラベルの二人だけが立ち続けた頂点に次ぐ椅子。

 ほんの一年前まで、若手の中では腕が立つ程度の中堅に過ぎなかった私が、その席に座るなんて。


「一種の笑い話ね……」


 血の滲む思いでランカーを目指す奴等にしてみれば、笑うに笑えないでしょうけど。

 それもこれも、本来なら五十人以上のチーム編成が推奨される高難度ダンジョンの最奥に、ごく少人数で容易く侵攻出来るスキル構成が悪い。


 とは言え、見知らぬ誰かの努力を軽々しく踏み越えていることを申し訳なく感じるほど、私は聖人君子じゃない。


 そもそも人間社会なんてリソースの奪い合い。取り分け探索者シーカー業界は完全なる実力主義。

 結果が出せなかった連中を、何故いちいち慮らなければならないの。


 ついでに言えば、実のところ悪い気もしていない。

 寧ろ、割と気分が良い。


 だって。この順位は、それだけ私が月彦の役に立てた証明みたいなものだから。

 そういう意味合いだと、素直に嬉しい。


 ──まあ、そんな個人的見解は取り敢えず置いといて。


「なんで俺がテメェより下なんだ、あァ?」

「それは勿論、実力ゆえだよ。文句でも?」


 獣が二人、一触即発状態なのよね。





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