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「瞬殺だったな」

「瞬殺だったわね」


 スキルペーパーくじ引き。

 一回百万円。お一人様一枚まで。


 そんな感じでテキトーに値段を決めてテキトーに場所を借りてテキトーに看板を出したのだが、ものの一時間で景品箱が空になった。

 暇潰しにもなりゃしねぇ。


「皆さん目の色変え過ぎだろ。サラ金で費用を捻出した奴まで居たぞ」


 しかも俺より歳下っぽかった。なんならハズレ引いてた。

 若い身空で借金とは、哀れな。






 探索者シーカー全体の六割ほどが、一桁台階層及び十番台階層で活動する下位。

 それは即ち、マトモな戦闘手段すらロクに持たない奴が過半数を占めることの証左。


 日本の場合、探索者支援協会への登録に際しスキルペーパーを無償で一枚貰えるとは言え、やはり品質はピンキリ。

 ランダム式を使って大ハズレを引き当て、単独ではゴブリンすら倒せず零細パーティの下働きで燻ってる者も少なくないと聞く。


 ──尤も、そんな奴が多少強力なスキルを得たところで、二十番台階層への進出はおろか、十階層フロアボスも突破出来まいが。


 異能を使い熟せりゃ、習得者の戦力を何倍にも跳ね上げる。

 異能を使い熟せなきゃ、ただ振り回されて終わる。


 結局、重要なのは本人の才覚だ。

 例えばリゼと全く同じ組み合わせのスキルを他のスロット持ちに与えたとして、アイツの一割でも性能を引き出せるかと言えば、ほぼほぼ不可能だろう。


 強いチカラほど重い代償を、緻密な制御を求められる。

 延いて深層でも通用するレベルのスキルとなれば、突き抜けた天稟あって初めて額面通りの効果を発揮出来る。

 元々は持ち得なかったものなのだ。当然と述べるべきか。


「今日、俺がバラ撒いたスキルペーパーの中に、戦闘系のアタリは幾つ入ってたっけか」

「二十くらいじゃない?」

「じゃあそいつらは、もう言い訳が出来ねぇな」


 才覚だけでは力不足。

 力だけでは能力不足。


 天賦の才、後付けの超出力。

 双方併せて漸く、人は怪物と渡り合える。


「お手並み拝見と行こうかね」


 正味、地力だけじゃ三下も倒せない奴等に然程の期待はしちゃいない。

 だがしかし、開花とは往々に計り難きもの。

 三日会わざれば刮目して見よ、てな。


 一人くらいハリのある奴が出て来てくれると、面白いんだが。





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