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「藤堂月彦君」

「あァ?」


 物陰から此方の様子を窺っていたΛ嬢を又も鹵獲し膝に乗せ、収まりの良さを再確認していたところ、佇まいを改めた南鳥羽博士が俺へと向き直る。

 なんじゃらほい。


「実を言うと今日、君に足を運んで貰ったのは、ひとつ提案を聞いて貰いたかったからなんだ」

「……予め断っとくが、連帯保証人にはならねェぞ」

「いや、そんな頼みをするつもりは無いけど」


 ならば良し。

 いつの間にか国家予算級の負債を背負わされ、秘密の地下施設で存在意義が全く分からん謎の棒を延々グルグルさせられるのは御免だ。退屈で死ぬ。


「連帯保証、ダメ絶対」


 知り合いの兄貴の同級生だった伊藤くんとか、それはそれは酷い目に遭ったんだぞ。






「君も知っての通り、私達には少なからず敵が居る」


 Λ嬢は他四機より機械部品が多いな。ジェネレーターの駆動音が姉妹の中で一番高い。

 マシナリー系クリーチャー由来のパーツ群。どうせならビーム兵器とか仕込もうぜ。


「特に、ここ半年ほどは動きも露骨になり始めていてね……現状の警護では、最早限界なんだ」


 つい先刻、矛を交えたばかりの襲撃者を思い返す。


 あのレベル相手となると、民間の警備会社どころか警察や自衛隊ですら壁にもならん。

 著しく突出した個に数の暴力など無意味。無双ゲーよろしく蹴散らされるのがオチだ。

 日本が保有する戦力で対抗出来そうなのは、国内のDランカー級に相当する精鋭達を集めた沈黙部隊くらいだろう。


「そこで私が経営する会社に新たな警備部門を設立する運びとなった。実質的には娘達の専属ボディーガードだがね」


 成程。自分で手練れを雇い入れる算段か。

 しかし、そういう連中は概ね既に何処かの組織に就いている筈。

 交渉の余地があるフリーランスの凄腕とか、六趣會ぐらいしか居ないと思うが。


 ──などと他人事に考えていたら、博士の口から耳を疑う言葉が飛び出した。


「部門長を、君に任せたい」


 …………。

 は?


「人生に嫌気でも差したか、オッサン」

「自暴自棄のつもりは無いよ」


 マジか。尚更タチ悪いわ、普通に正気を疑う。

 俺が事業主なら俺だけは絶対に雇わんぞ。能力面は兎も角、人格面に問題が山積みだ。


 誰が人格破綻者か。失敬極まりない。





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