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「こっちだ。来てくれ」
暫し席を外していたナントカ、いや南鳥羽博士に連れられるまま、隠し扉の先に続いていた階段を降りる。
「娘達が騒がしくて申し訳ない。あまり仕事以外で他人と関わる機会を作ってあげられなくてね……」
「生まれを考えりゃ、そこらの奴と同じ扱いってワケにも行かんだろ」
尤も貴重な交流相手が俺みたいなのじゃ、却って情操教育に悪い気もするが。
ちょっとした爆撃程度ならビクともしなさそうな、分厚いシェルター構造の地下階。
u-aが言っていたメンテナンス設備と思しき機材が所狭しと並ぶ、フットサルコートほどの大部屋。
「……日本全国プラスアルファに、逐一こんなもん建ててんのか?」
頷く博士。
最低でも数百億円単位の金が要るだろ常考。
「幸い資金は有り余ってる。これも親の責務だよ」
「親、ねぇ」
およそ俺には理解し難い筋合だな。
家族の情とか、人生で一度たりとも感じたことねぇし。
手術台に似た金属製のベッド。
そこに貫頭衣姿で寝かされ、後頭部から数本のケーブルを伸ばしたガイノイド。
五女の……庵。こっちに居たのな。
道理で上の面子が足りないと思った。
「故障か?」
「うん? ああ、いや、そうじゃないんだけどね」
なんでも躯体の機能を維持するため、定期的に必要な措置があるらしい。
しかも五機全員、必要な周期が全く違うので、こうして個別になるのだとか。
「庵は構成の八割以上が有機物な分、特にサイクルが短くてね。月に一度は細胞の劣化を抑える処理と投薬が欠かせないんだ」
めんど。
「繊細に造り過ぎだろ。ダイバーズウォッチを見習えよ」
「いやいや。寧ろ三十日間も整備無しで連続稼働可能な精密機械の方が少ないさ」
そんなもんかね。
「頑強さが売りの、中には自己修復機能すら備えた
考えてみりゃ、それもそうか。
例えばヒルダの戦闘用機械義肢も、四半期毎にオーバーホールせねばならんと聞く。
アイツの場合、ある程度は『
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