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 ふと思い至り、腰を上げる。


「曲がりなりにも殺し合った仲だ。ツラくらい拝んどくか」


 伏した襲撃者殿に歩み寄る。

 その最中──ぐらりと世界が揺れた。


「おおう」


 空間そのものが崩れて行く。

 並ぶ形で、リゼの張った結界も薄れ始める。


 三度も瞬きを挟んだ後には、元の市街地とコンニチワ。

 いやはや派手なチカラだ。演出を盛り上げるって点では他の追随を許さんかもな。


 ま、それはそれとして、今は車道の真ん中に移った襲撃者殿の御尊顔を──


「お」


 妙な駆動で身体を起こさせた両脚。

 内蔵された推進器が火を噴き、動けぬ本体を空高く運ぶ。


「おー」


 最早なんでもアリだな。

 あそこまで多彩なオプションを備えた機械義肢が両腕両脚フルセットとなれば、戦闘機くらい買えそう。


 実力も踏まえ、やはり大規模な組織の構成員と考える方が自然。

 シン・グラビティ・ガールズも、厄介そうな輩に目を付けられたもんだ。


「どうすっか」


 追って捕らえることは容易い。素性を吐かせることも容易い。


 が。少し悩んだ末、見逃すことにした。

 その方が後々、面白くなりそうだし。






 さてと。


「こっちも逃げるか」


 遠くでパトカーのサイレンが聞こえ始めた。

 もし捕まって探索者シーカー活動の停止処分とか食らったら、この国を無事で済ませる自信ゼロ。


「一応、保険はかけとこう」


 指を鳴らす。

 これで過去五分間、俺の存在は凡ゆる記録媒体に残っていないことになった。


 便利で困るぜ『ウルドの愛人』。

 ただし調子くれて使い過ぎると、ダメ人間待ったなし。





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