526
適当なクレーターの縁に座り、併せて『豪血』を解く。
「血が足りねぇ」
あー気持ち悪。
ここで『錬血』を使うワケにも行かんし、増血薬持って来とけば良かった。
あれ、でも有効期限が大丈夫なの残ってたっけか。
一日過ぎただけで、味も薬効も死ぬほど劣化するんだよな。
「砕けた骨の破片も、あちこち刺さってやがる。邪魔くせぇ」
骨片に通った糸を張り、細かく整形。
よしオーケー。後で
──しかし。
「虚しい」
我が心境、さながら晩秋のカブトムシが如し。
諫早の波しぶきを思い出す。行ったことないけど、諫早。
「燃え切らねーなァ……」
多分に焼け残りが燻った胸を、血が滲むほど掻く。
ちらと視線を向けた先には、うつ伏せで倒れる人影。
瀟洒だったスーツは無残に裂け、正体を覆い隠す薄黒い靄も剥がれかけた、半死半生の襲撃者。
……奴さんは間違いなく難度八ダンジョンボス、アステリオス・ジ・オリジンや絶凍竜妃フォーマルハウトにも劣らぬ腕前だった。
それが奮戦したとは言え、素手の俺に、あのザマ。
対し、此方の損傷は微々たるもの。そも大半が自傷や自壊。
ほんの半年足らず前、死に目を見せられたレベルが、今や完全な格下。
否。難度九すら『深度・参』の前では虫ケラ同然だった。
「そりゃそうだ」
光よりも速い、時間と空間の整合性さえ失われる次元の身体能力。
理の枠内、尋常の存在に渡り合うことを求める方が酷な、理外の領域。
分かっている。
分かっているからこそ──渇く一方だ。
「俺より強い奴と、闘りてーなァ」
難度十ダンジョンは、リゼからの禁止令が依然継続中。
いっそ、ハガネかシンゲンを狙うべきか。ガチを望むなら他の六趣會を一人二人殺すって手もアリだな。
なんなら他国で名を馳せてる連中に喧嘩を売っても構わない。
Dランキング現一位が率いる世界最強の
…………。
兎にも角にも、渇く。
渇いて渇いて、仕方ねぇ。
「はーっ」
アンニュイですよ、月彦さん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます