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 直径一キロにも満たぬ矮小な仕切りの内を、礫渦巻く暴風が荒れ狂う。

 されど世界を隔てる境界面には、さざ波ひとつ立ちやしない。


「チッ。出られねェか」


 軽く舌打ちを鳴らすも、半ば見え透いていた結果。

 リゼの断絶領域を破るとなると、アイツがズラした空間の位相を正確に探し出す方法、加えてに干渉する手段が無ければ、どうにもならん。


 単に膨大なだけのエネルギーでは暖簾に腕押し。

 俺の持ち札で有効打となりそうなのは、向けられた意識を媒介とする『呪血』くらいか。


 でもアレ、あんま使う気にならんのよな。

 どいつもこいつも勝手に捻れて潰れて自滅するから。






 濃い塵煙が立ち込め、殆どゼロに塞がる視界。

 さもありなん。


 が。


「派手さ不足」


 雑品ゴミ用の圧縮鞄に放り込んでたギフトボックス。

 あらゆる可能性が詰まった、開けるまで何が出るか分からないミステリーアイテム。


 ──別名、俺が開けると必ず爆発するボックス。


 スキルペーパーと動揺、あらゆるクリーチャーがドロップしうるため、チリもナントカで積み木遊びに使えるほど抱えた不良在庫。


 そいつをありったけ、バラ撒いた。


「ジャックポット」


 予定調和。ひとつ残らず大爆発。

 閃光と衝撃のオーケストラが、小世界を劈く。


「ハハッハァ! 芸術と言えば爆発! 特撮と言えば爆発! アクションと言えば爆発!」


 即ち、人生とは爆発。

 もしも今際に死因を選べるなら、爆死こそ望ましい。

 焼死でも可。






 立ち昇る火柱、暴威散らす発破。

 すっかりクレーターだらけとなった荒野を、人型の輪郭が駆けている。


「ベネ」


 死んでいない。どころか、大したダメージも負っていない。

 良いぞ。これしきで斃れられては興醒めも甚だしい。


「近接戦を御所望か」


 ディ・モールト・ベネ。

 こと闘争に於いて、骨肉を削り合うインファイトに優るもの無し。

 謹んで乗らせて頂こう。


「豪血──『深度・弐』──」


 コンマ二秒後、第三頚椎を狙った短刀の刺突が後方から来る。

 そいつを弾いて、ゴングと洒落込もうや。





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