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よーし、地形とか変えちゃうぞー。
怪獣映画も帽子を脱ぐ暴れっぷり、披露しちゃうぞー。
みたいな感じで張り切ってたら突然、周囲の景色が変わった。
「あァ?」
見渡す限りの殺風景な荒野。
俺ってば、まだ更地にしてねーんですけど。
そんな疑問を浮かべる只中、頭上の空間が罅割れる。
耳朶を刺す、狂った笑い声に似た風切り音。
赤とも黒ともつかない軌跡が亀裂から奔り抜け、上空で拡散。ドーム状に薄く伸び、全方位へと降り注ぐ。
地表が別世界と転じて十秒足らずの末、俺は完全に隔離された。
「……リゼとヒルダの仕業か。さてはu-aの差し金だな」
要らん真似を。こちとら既に破壊活動の気分だったと言うのに。
ラーメン食いたい時、牛丼出されたような肩透かし。ロボットは人の心が分からない。
「よくもオタノシミに茶々を。絶許」
u-aは後でネジ一本になるまでバラす。
加担したヒルダも、腹に手ぇ突っ込んでモツ抜きの刑に処す。
──そして、リゼには世にも恐ろしい罰をくれてやろう。
明日のティータイムに出す予定だったワッフルケーキは、トッピングの生クリームとチョコレートソース無しだ。
…………。
どっちかだけにしとくか。両方没収は流石に酷過ぎる。
「さァ、て。どーすっかな」
俺同様、想像世界へと引き込まれた敵手殿は動かない。
スーツだか装備品だかに仕込んだ認識阻害効果が依然と続いてて感情や表情を上手く読み取れんが、環境の激変に随分と狼狽えておられる模様。
「てか呼吸しづれぇ。ヒルダの奴、気圧も大気組成もテキトーに作りやがって」
体感的に海面気圧の三割前後。エベレスト山頂と同程度。
酸素濃度も、息をする毎に頭が痛むほど低い。
なんなら気温は五十度近いし、足元の地面も不安定に波打ってるし、重力は五倍くらいあるし、何これ。
ボケた爺さんでも、もうちょいマシなメイキング出来そうだぞ。酔っ払ってんのか。
「ただでさえ、だいぶ血ぃ擦り減って、巡りが悪いってのに」
……まあ、いい。どの道『深度・弐』状態で万全のパフォーマンスを保てるタイムリミットは三十秒程度。
赤青切替や深度操作などによるペース高下を踏まえても、一分がボーダーライン。どんなフィールドだろうと大差無い。
「血を満たした水時計。久々だな、時間に追われながらの戦闘は」
胸躍る。
難易度は高いほど燃えるタイプ。
「そんじゃ、改めて小手調べと行こうや! つい今、思い付いたばっかりの技でよォ!」
跳ぶ。
斬撃の檻で鎖された世界を覆う天蓋まで。
「晴れときどき呪詛、ところにより月」
高度約八百メートル。
七十七回の蹴り足で、下方に加速。
瞬く間、音を数百倍凌ぐ速度まで到達。
「『深度・壱』──鉄血──『深度・弐』──」
地に触れる間際『豪血』を解き『鉄血』へ移行。
現実よりも五倍重い身体を余さず硬化させ、インパクト。
俺自身を質量兵器と見做す、神の杖。
名付けて。
「──『
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