521・u-a






「──もしもし、榊原リゼ様。u-aです」


 気の無い返事が返る。


「──はい。月彦様関連のことで少々お話が」


 他に貴女への用など、あると思うのか。


「──ヒルデガルド・アインホルン様も、其方に御同席されてますね?」


 酒に酔った、調子外れな歌声。

 まだ日も高いのに。


「──用向きだけ、単刀直入に申し上げます」


 あまり長く話したい相手ではない。

 劣等感ばかり、掻き立てられるから。


「──貴女様方のチカラで、月彦様を中心とした半マイルに想像世界の構築と、六十秒の空間閉鎖を」


 億劫げなレスポンス。

 気怠い態度が、通話越しにも伝わる。


「──ええ。今すぐに」


 早くして。


「──放っておけばどうなるのか、ですか?」


 分かり切った質問を。






「──数分以内に日本の国土が、およそ二パーセント消滅します」





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