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「凄かったですね、月彦さんっ!」
興奮冷めやらぬ様子で飛び跳ねるつむぎちゃん。
年相応で大変結構。
「私、ライブとか初めてで! はぁっ、まだドキドキしてる……!」
そいつは良かった。
心臓ブチ破るほどの刺激あってこそ、人生だ。
折角なので一緒に晩飯でも食おうという流れになり、小比類巻兄妹を連れ立って歩く。
尚、リゼも誘ったのだが、やめておくと断られた。
あの健啖家が珍しい。明日は隕石の雨か。
「月彦さん。手袋、破れてますよ?」
「む」
つむぎちゃんに指摘を受け、掌を返すと、布地が焦げて穴あき状態。
大方、銃弾を掴んだ時だろう。対ダンジョン加工が施されていない品は、ダンジョン由来の物質と強く衝突しただけで消滅する。
物理法則の優先順位が云々とか諸説あるも、真実は未解明。ぶっちゃけ興味も無い。
「脆過ぎる。やっぱ私服類にも最低限、防御力は備えさせた方が良さそうだ」
両手を素早く擦り合わせ、摩擦熱で手袋を燃す。
「あ……じ、じゃあ、わた、私が織りま――――え」
露出した左手に視線を向けたつむぎちゃんの動きが、強張った。
どったのセンセー。
「やば」
何故か咄嗟に後ろへと退く甘木くん。
どったのセンセー方。
「…………そ、れ」
やがて、ぎこちなく示されたのは、薬指に嵌めた聖銀製のリング。
ちなみに以前『鉄血』無しで『破界』を使った際、熱で癒着してしまい、物理的に外れなくなってたりする。
聖銀の融点、確か四千五百度くらいある筈なんだけどな。
別に指の肉ごと引き剥がしても構わなかったんだが、邪魔になるでもないため放置中。
寧ろ左手でなら樹鉄刀や女隷を介さずとも
で。コレがどしたん?
「月彦、さん……結婚、されてたん、ですか……?」
「あァ? まあ、二ヶ月か三ヶ月くらい前に」
――ちょい待ち。
そうだ。甘木くんから、つむぎちゃんにはオフレコでと頼まれてたんだわ。
よし『ウルドの愛人』発動。今のナシ。
「三ヶ月……兄さん。まさか知ってたの?」
「え!? あ、や、いやそのえっと、確かにそういう可能性は無きにしも非ずだけど、敢えて追求したりしないみたいなスタンスが近頃のトレンドで――」
「兄さん」
「はい知ってました」
差し替えの加減を誤り、痕跡が残ってしまった。
「帰ったら、お話があります」
「はい……」
同じ過去を二度は差し替えられない。
ごめんなソーリー、甘木くん。
ちなみに、この四日後。人類滅亡クラスの隕石が述べ十三、マジで地球全土へと降り注いだ。
本当にメテオレイン襲来とか、超ウケる。
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