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「私立の学祭ってのは、随分と華やかな次第で」
校庭に立ち並ぶ幾つもの出店。校舎を丸ごとデコレーションしたような飾り付け。打ち上がる昼花火。
この手のイベントとは無縁の身だった俺でも、催し事に力を入れた校風なのだと瞭然な賑わい。
「学祭つーか殆ど縁日。よく見りゃ出店も概ね業者」
「衛生管理とか色々ありますから。飲食物を扱うならプロに任せるべき、みたいな方針らしいです」
「成程」
友人と共に回る約束があると去って行った甘木くん。
妙に棒読みかつ白々しい振る舞いだったけれど、敢えて詮索はしない。
俺は気遣いの出来る男。
「さて。つむぎちゃんは」
校舎三階東側。女子生徒二名と歓談中。
丁度良い。近くの窓が開いてる。
「豪血」
一瞬のみ動脈に赤光を伝わせ、跳躍。
窓枠へ足をかけるように、着地。
「あ、月彦さんっ」
「おはようマドモアゼル。本日も晴天也」
危なかった。あわや不審者扱いで警備員呼ばれるとこだった。
「ごめんなさい……マナちゃんもアンリちゃんも、ちょっと過保護で……」
だろうな。
容姿の時点で威圧的な俺を前に、つむぎちゃんを庇うようなポジション取ってたし。
でも「女殴ってそう」とか「擬人化したギガノトサウルス」は無いだろ。
せめて「女怪殴り殺してる」及び「擬人化したスピノサウルス」くらいにしとこうや。
「そう言えば、年相応の背格好を見るのは久方振りだ」
スキル『アラクネ』発動に伴う肉体最適化により、二十歳前後へと成長した姿。
其方を見慣れてる俺からすると、寧ろ本来の方が物珍しかったり。
なんなら制服姿に至っては、たぶん直に拝むの初めてだし。
「異様に似合うな、黒セーラー」
黒地と赤ラインが、色素の薄い白髪青目を見事に引き立てている。
色合いだけで言えばリゼにも合いそうだが、アイツがセーラー服を着たところでコスプレの枠を出ないだろう。
想像しただけで笑える。
「あう……」
まじまじ見られて照れたのか、朱の差した顔を両手で覆うつむぎちゃん。
不躾だった。ごめんなソーリー。
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