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「山雨来たらんと欲して風楼に満つ」
「なんなの急に」
特に意味は無い。
「それじゃ俺は出掛けてくる。昼飯は台所に用意してあるからな」
「ん。お土産はカキ氷でいいわよ。ブルーハワイ」
溶け果てるわ。
「鉄血」
小比類巻家の上空数百メートルの位置へと道を繋いで貰い、玄関前の路地にスーパーヒーロー着地。
やはり登場はコレに限る。
「わああああ!? な、なんだ、爆撃!?」
インターホンを鳴らすにも及ばず、血相変えて飛び出してきた甘木くん。
グッドモーニング。
アスファルトに深々と奔る蜘蛛の巣状の亀裂を『ウルドの愛人』で消し去り、甘木くんを連れ立ち、いざ出発。
と言っても、つむぎちゃんの中学まで徒歩十分あるかないかだが。
「御両親は如何された系」
「昨日、行きました系です。今日は父さんが休日出勤で」
勤め人は大変だな。
ところで。
「何をそんなに忙しなく周りの様子を窺ってるんだ」
「いや、その……襲撃されやしないかと」
ここはニューヨークのダウンタウンに非ず。
俺の地元なら兎も角、現代日本で辻強盗の心配は無用じゃなかろうか。
「……実は今日の演奏会に、シンギュラリティ・ガールズが招かれてるらしくて」
そだね。
「や、普通に考えたら有り得ないですよね。世界の歌姫逹が、いち学園祭のゲストなんて。俺も最初は流石にガセだと思いましたし」
そなの?
「でも五日前に公式ホームページで告知が出されて……そこからは……戦争、でした」
戦争て。
「演奏会はチケット制で、生徒一人一人に何枚かずつ配られるんですけど……それを俺が持ってるとクラスメイト達に知られて……」
尻切れトンボに口舌を打ち切り、青褪める甘木くん。
何があった。
「なんかゴメン」
「え? どうして藤堂さんが謝るんです?」
諸事情。
尚、目的地までの約十分間、延べ三回襲撃を受けた。
男子校生のパッション凄いな。久し振りに爆笑したわ。
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