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「うぇーい! うぇいうぇーい!」


 朝。ドクペを求めるリゼの使い走りへと赴く道すがら、吉田を見た。

 ジョニー氏が運転する車にロープを結び、ウェイクサーフィンの要領でスケボーを転がしてた。


「あっひゃっひゃっひゃっひゃ! 超たーのしー!」


 何しとるんだ、あのアホ。

 つーか道交法とかに触れてんじゃねぇのか、あれ。






「はい……はい、ホントすみません、はい……」


 年々、製造数が減少傾向にあるサイケデリックドリンクを無事購入した帰り際。

 パトカー脇で鬼の形相をした警官相手、すっかり小さくなってジョニー氏共々に低頭する吉田を見た。


「めっちゃ怒られたナリ」

「吉田様。無茶振りに応じた結果、キップを切られた私に対する謝罪の言葉を頂きたいのですが」


 労基に駆け込め。

 それか、いっそ辞表を突き出せ。


「ごめんちょ。ドンマイ、ジョニー!」

「サイモンです。そして、もしもそのような適当で済ませるおつもりなら、歯を食い縛って下さいませ」


 二秒後。

 綺麗な放物線を描き、世紀の素っ頓狂が宙を舞う。


「へぶらばぁっ!」


 ちょうど着地点に信号待ちで停まっていた大型トラック。

 ロングアッパーのクリーンヒットを受けた吉田が荷台の屋根に転がった瞬間、示し合わせたかの如く発進する。


 尚、北海道ナンバーだった。

 高速道路に入るより先、目を覚ませるかどうかが分かれ目だな。


 …………。


「明日には素知らぬ顔で大学に来てるだろ」


 帰るか。






 翌日。


〔ヘルプ! 月ちゃんヘールプ! 北極でティラノサウルスに乗った全身黒光りするマッチョの集団に追われてんだー!〕

「情報量」


 謎のテレパシーを受信するや否や、悲痛な叫び。

 何がどうして、そうなった。


〔ひー、許しちくりー! あんた達が密売してた闇プロテインのことは墓場まで持って行くからー!〕


 今、少なくとも俺に秘密が漏れたぞ。

 内容は意味不明だけど。なんだ闇プロテインって。





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