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 結論から述べると、男鹿鬼ヶ島八十階層の傷痕は、半月以上が過ぎても癒えなかった。


 俺達三人の体内ナノマシンから吸い上げた、処理速度の限界で飛び飛びな五感取得情報記録。

 それを基、探索者支援協会が専門の研究機関に調査依頼を出した際は、蜂の巣を突いたような騒ぎになったとか。


 曰く、単なる破壊や損壊の域を遥かに超えた、存在自体の欠落。

 故に修復しようが無いのだろう、とは迷宮学に於ける第一人者サマとやらの言。


 ――加えて、計器関連の数値を見るに、男鹿鬼ヶ島全体で大幅なエネルギー密度の低下が起こったらしい。


 ダンジョンボス討伐による弱体化とも似て非なる反応。

 詳細は更なる検証を待たれるところだが、今後、明確な解答が導き出されるまでの間、階層消滅規模の攻撃は控えるよう注意喚起を受けた。

 ウケる。






 それはそれとして、男鹿鬼ヶ島はキッチリ攻略扱いとなったため、諸々の報酬は滞りなく俺達の懐に入った。

 公明正大なAI裁定の結果、金もポイントも七割近くリゼ行きだったため、一桁シングルランカー到達にはもうひと押し欲しい、とヒルダが気炎を上げていた。


「つーか札束が押し入れに収まり切らねぇ。どうしろと」

「いい加減、銀行に預けなさいよ」

「通帳もカードも失くした。口座番号が分からん。再発行もダリぃ」


 少し考え、リゼの口座に纏めてブチ込めば済むと気付く。

 天才かよ俺。






 ちなみにインテは車検を通らなかった。

 やっぱ違法改造じゃねぇか、あのトンチキ車。

 吉田の奴、今度会ったらシバく。





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