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「どう考えてもヒルダの所為だろ」
「待って待って絶対違う。こういう類はリゼの領分じゃないか」
「領分だからこそ、こんなヘマやらかさないわよ。怪物指数カンスト間近の旦那様なら兎も角」
ギリギリ滑り込んだ階段部で、やいのやいのと責任の擦り付け合い。
お世辞にも見栄えするとは評し難い光景だが、やむを得まい。
「まさか階層丸ごと消滅しちまうとは。こらヒルダ、こら」
「いきなり足元が崩れ始めた時は背筋が冷えたよ。まあ僕は飛べるんだけど。反省しなさいリゼ」
「あと数秒、脱出が遅れてたら少しヤバかったわね……自首した方が罪は軽くなるわよ月彦」
侃侃諤諤。
おもむろに手を伸ばす。
つい先程まで、八十階層が在った闇中へと。
肘から先が漆黒に呑まれ、五感の網より掻き消える。
試しに指を鳴らしてみるも、その音色が耳朶を叩くことはなかった。
あらゆるダンジョン、あらゆる階層の果てと同じ、全き黒。
俺が完全索敵領域と呼ぶ見聞覚知を以てしても、この先に何があるのか、どうなっているのか、片鱗すら掴めない。
――衝動的な好奇心に突き動かされ、足を踏み出す。
が。飛び込む間際、後ろからリゼに抱き付かれる。
女隷越し、胸板に爪を立てられた。
「やめて」
「ハハッハァ、悪い悪い。ほんの出来心だ」
…………。
ところでこれ、ちゃんと二十四時間経ったら元に戻るんだよな?
何にせよ、階層ひとつで被害が収まってくれて幸運だったと考えるべきか。
「呪縛式と四色並行の『深度・参』を出さなくて良かった。リゼを巻き込んで死ぬのは御免だ」
「『
「手前の
浅く深く、短く長くの差異こそあれ、三人同時、溜息ひとつ。
静かな音色は石造りの冷たい階段に反響し、緩やかに溶けて行った。
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