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「ぅるるるる」
関節を外し、忌々しい戒めを抜けて自由の身となるも、既に獲物は掻っ攫われた後。
この遣る方無さ、如何に晴らすべきか。
「リゼ。取り敢えず抱き締めさせてくれ」
「ん」
大鎌を足元に突き立て、両腕を広げた華奢な身体を掻き抱く。
か細く、しかし柔らかい不思議ボディ。特に胸と腰回り。
まあ、それは兎も角、捕まえたぞ貴様。
「菓子如きで俺を売りやがって。酷い目に遭わせてやろうか」
「具体的には?」
じっと間近で此方を見据える赤い瞳。
そういうの聞かれたら月彦くん困る。
「……酷い目は酷い目だ。謝るなら今のうちだぞ」
「やれるもんならやってみなさいよー」
くそ。いい感じの仕置きが全く思い付かん。
やむなし。コイツの分も含めて、ヒルダに倍額ツケを払わせるか。
「不穏な企みを察した僕が帰還。てかキミ達、隙あらば二人の世界作るのホントやめて」
ノコノコと戻ったな、飛んで火に入る夏の虫め。
「好きな内臓ひとつ選べや。それ以外を残らず毟り取ってやる」
「やめなさい」
はい。
「折角の大物を秒で食っちまいやがって。あー勿体ねぇ」
階層同士を繋ぐ階段を下りつつ、苦言を呈す。
「まともに
俺の見立てでは同じく七十階層を塒とする魔界都庁ダンジョンボス、絶凍竜妃フォーマルハウトより少し上。尤もアイツは、あまりにも弱体化が酷過ぎたけど。
逆に十全だったアステリオス・ジ・オリジンと比べれば流石に格落ちは否めぬも、ボスの特性として無限に等しいエネルギー供給を受けられる分、やはり通常クリーチャーとは一線を画す。
ガチならボチボチ楽しめた筈。
「だから本腰を据えられる前に素早く仕留めたんじゃないか」
対し、ヒルダは伸びをしながら理解不能な論を述べる。
「フロアボスなんか倒したところで、魔石もドロップ品も討伐ポイントも手に入らない。真面目に戦うだけ損だよ損」
「……? …………?」
損? なんで?
殺し殺されのスリルを味わえるんだぞ。避けようとする神経が分からん。
「お前、何のために
「富、名声、力。この世の全てを手に入れたい。暴力の他に取り柄が無い僕にとって、
つまりゴールド・ヒルデガルドになりてぇワケね。
語呂悪っ。
「お」
長い階段を終え、七十一階層に降り立つ。
すると好都合、近くに手頃そうなクリーチャーが居た。
「アレは俺が貰うぞ。邪魔したら解剖な」
「もしリゼが邪魔したら?」
「当然ヒルダを解剖する」
「不公平!」
双頭四腕を持つ巨躯の鬼。
特徴的なシルエット。差し詰め『
相手にとって不足無し、と思いたい。
「抜剣――」
やっと試し斬りが出来る。
「――『
ああ、この感じ。懐かしい。
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