475・Hildegard






 七十五口径の金属片を八方から撒き散らす。


 銃口初速マッハ五、発射速度毎秒十五発。

 空間圧縮を施したマガジンは、掌サイズでありながらも三百発が装填可能。


 フランスの高難度ダンジョン、退廃都市ミシェル。その六十番台階層に棲まうマシナリー系クリーチャーのドロップ品を流用したレールマシンガン。

 個人携行可能なサイズの銃火器としては、概ね最高峰の攻撃力と制圧力を兼ね備えた武装。

 難度六以下のダンジョンボスなら三秒で挽肉と化す火力。それが八梃も揃えば、難度七相手だろうと致命傷を与えられる。

 しかも私が扱えば射線は視えないし、銃声すら聴こえない。即ち不可避の弾幕。


 ――ただし弾一発につき五百ユーロ。倒したクリーチャーから高額なドロップ品でも引き当てない限り、使うほど赤字が嵩む。

 何せフル装填一回につき、日本円換算で二億近く吹っ飛ぶ計算。


 ダンジョン産の希少金属を素材にしてるから極めて妥当な価格設定だけど。

 あと、オーバーホールにも多額の費用がかかる。剣とか槍より遥かに構造が複雑な所為で自己修復機能を備え付けられないんだよね。

 国や大企業がバックについた奴等を除けば銃を使う探索者シーカーが殆ど居ないのは、つまりそういう理由。


「世知辛いなぁ」


 しかも。


「あんまり効いてないし」


 撃ち方やめ。

 二十万ユーロ分くらい持って行かれちゃった。


 まあ私の使う弾は、基本的に『アリィス・トラオム』で造った想像の産物だけど。

 あー良かった。てか、そうでもなきゃ対クリーチャー火器なんて金食い虫、使うワケない。

 あっという間に破産しちゃう。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る