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 たかが片手が原形を失くしただけだと言うのに、蹲って喚き続ける梅沢くんモドキ。

 煩いし一向に話も進まんので、痕跡ごと過去を差し替え、リテイク。






「つまり八八位殿がリーダーを務めるチームにリゼをスカウトしたいと?」

で名を上げた奴と組み続けるより、ずっと有意義な筈だ」


 ほう、おこぼれ。

 なんともはや、言い得て妙。


 確かにリゼが居なければ、Dランカーの席を得るまで今暫くの時間を要しただろう。それどころか軍艦島あたりで死んでいた可能性が極めて高い。

 当時の俺は『深度・弐』込みでも精々、難度五のダンジョンボスと互角程度だったし。


「榊原リゼのテレポート能力は組織単位で運用してこそ十全に効力を発揮する。そもそも一桁シングルランカーが無所属なこと自体おかしい」


 これまた尤もな言い分。

 でも後半は個人の勝手だろ。六趣會だってフリーランスだし、斬ヶ嶺鳳慈に至っては死ぬまで固定のパーティすら組まなかった生粋の一匹狼だぞ。


 そして会話を遡るが、そっちの提案に対し有意か無意かの判断を決めるのは勧誘を受けた側だ。


「本人の意見は?」

「アンタ以外と組むのはイヤ」


 一刀両断、取りつく島なし。億劫げに俺の後ろへと隠れるリゼちー。

 梅沢くんモドキとの対面中にも同じような台詞を吐いたのか、彼の表情が益々渋くなる。


「……賢い選択とは言い難いぞ。公開されたログを浚ったが、そいつはチームに属せる人間じゃない。寧ろ協調を乱すノイズだ」


 反論の余地もありゃしねぇ。


「勘違いしてる輩も多いけどな、探索者シーカーってのは結局のところビジネスなんだよ。組織立った行動の出来ない奴は、二流のまま小さく終わるのが関の山さ」


 正論を売りに来た商人かコイツ。

 まあリゼとて、お世辞にも組織向きな気性とは呼べんが。


「――俺のところに来い。でかいスポンサー、潤沢な資金、最先端の装備、必要なものは全て支給される。社宅は都心のタワマンで使用人付き、福利厚生も万全だ」


 結構な好条件。その分ノルマきつそうだな。

 あ、だから空間転移が欲しいのか。納得。


「チームメンバーは俺含む三人がDランカー。他も準ランカーの一線級が揃ってる。一桁シングルを迎えるには十分な環境だろう?」


 …………。

 ふーん。


「リゼ。確か、ここの地下って交流会の時に使った探索者シーカー用装備の稼動試験場と同じ設備が入ってたよなァ?」

「あるわね」


 爪の先ばかり、興味が湧いた。


「御高説を遮るようで悪いが、八八位殿。今回の遠征に連れて来たメンバー、全員下に集めてくれよ」

「……なんだと?」


 一流を自負する実力、二流の俺に見せて頂戴な。

 結果次第じゃ、リゼも少しは考え直す、かも。





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