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 肉体に過負荷を強いる『豪血』は、使えば使うほど身体能力と感覚器官が鍛え上がる。

 故、俺は通常の筋力練成を積む必要が一切無い。


 ……無いのだけれど。そういう地道な作業をしたくなる時が、ごく稀にあったりする。






「サンラータン……タイピーエン……」


 探索者支援協会甲府支部、トレーニングルーム。

 シャフトの片方にのみ三百キロの錘を乗せたバーベルで、延々と素振り。


「カオマンガイ……フージャオピン……」


 単純に持ち上げるだけなら猿でも出来るが、振り回すとなると案外難しい。

 何せ俺の体重は九十キロも無い。錘の三割以下だ。

 少し重心を掴み損なえば、それだけでバランスが崩れ、引っ繰り返ってしまうだろう。


「半チャーハン……タンタンメン……」


 よく考えれば別に難しくもなかったわ。

 とどのつまり、常に重心を掌握し続けてりゃいいだけの話よ。


「豚骨ラーメン……あー、イマイチ韻を踏めてねぇ……」






 使い終えたバーベルを元の置き場に仕舞った後、錨鎖が如しチェーンで吊るされた巨大サンドバッグの前へと立つ。


「懐かしいな」


 概ね去年の今時分、水銀刀を買い求めた際に『深度・弐』の試運転でブッ壊したものと同じ型。

 マシンガンの掃射を受けようがビクともしない、探索者シーカー向けのトレーニング用品。


「……丁度いい。試し斬り前に埃くらい払っておくか」


 圧縮鞄から樹鉄刀を出し、両腕に装着する。


 尚、リゼの大鎌やヒルダの双剣みたく瞬時に手元へと喚び寄せるリターン機能を付けられないか果心に打診したところ、可能は可能だが材料費だけで億近い金と半年ほどの時間が要ると言われた。

 なんでも根本的に機構を組み直し、馴染ませる必要があるのだと。


 金は兎も角、半年も待ってられないので諦めた。


「抜剣――『鞘式しょうしき優曇華うどんげ』――」





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