462・Hildegard
ツキヒコ曰く、バームクーヘンは元々ドイツの郷土菓子らしい。
ずっと日本のケーキだと、疑いもしなかった。
あと昨日の朝、散歩中に
知ってたけど彼、ちょっと変。
〔つまりブッ殺すと心の中で思ったなら、既に行動は終わって――待て。そうだ、雑談するために電話したんじゃねぇ〕
あ。ちゃんとあったんだ、本題。
もう三十分は喋り通しだし、てっきり暇なんだとばかり。
〔お前、どうせアレだろ? 狙ってんだろ、
おやつか何かを強請るリゼの声を背景に、ツキヒコが告げる。
そして、それは、勿論そう。
難度十ダンジョンへと踏み入るに足る力があるかを推し量る指針とするべく、およそ二十五年前に発足された制度、Dランキングの頂点。
私が、と言うより、幾らかの野心ある
〔お前は現在六六六位。来期に持ち越されるポイントは、確か前期の六割。未踏破の難度八を攻略した分が丸ごと入っても、五十位に食い込めりゃ御の字か〕
ざっくり計算の割、リアルな線。
思考放棄が多いだけで、普通に頭いいんだよねツキヒコ。思考放棄が多いだけで。
〔そんなアナタに! 今限りのビッグチャンス!〕
うわあ、胡散臭い深夜の通販番組みたいなノリ。
よく姉さんが変なの買っちゃうんだ。光るフライパンとか。
〔実は、かくかくしかじか〕
ごめん分かんない。
〔……再調整した樹鉄刀の試し斬りに、難度九ダンジョンへのアタック申請を出してる最中でな〕
試し斬りって普通、カカシ相手にやるものじゃないかな。
どれだけカタログスペックが立派でも、運用データ皆無な最新兵器とか、戦場じゃ役に立たないし。
〔ただ、そこ未踏破なもんで、許可が下りるまで一週間ほど掛かるんだよ〕
いよいよ以て正気とは信じ難い。
あーそうだ。ツキヒコってばイカレてたんだ。
〔予定者に、お前の名前も入れといた〕
え。
〔Dランカーは国外活動に際した手続きが殆ど免除される。一週間ありゃ事足りるだろ〕
事足りるけど。
いやいや、ちょい待ち。気軽に言ってくれちゃって。
未踏破の難度九とか、普通は数ヶ月単位の入念な計画と準備を踏まえてだね。
〔一緒に行こうぜ。男鹿鬼ヶ島〕
「行く!」
わーい。
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