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「はいツキヒコ」

「あァ?」


 手渡された一枚の紙片。

 開くと、水着姿でポーズを取るジャッカル女史の写真が挟まれてた。


「ごめん間違えた。こっちだった」

「そうか」

「写真返して。懐に仕舞わないで」


 ちっ。






 ――異界に潜む赤子の右目に捉えられた者は、引き摺り込まれた精神の内で、己が影と相見える。

 ――影とは即ち、本人も知り得ぬ別側面。敗れれば肉体を奪われる、表裏反転の罠。

 ――赤子の右目に瞳は二つ。魔人とu-aの二人が術中に落ちる。

 ――心配は無用。通常、影を降すことは至難だけれど、彼等は例外。

 ――魔人は、その強過ぎる自我が人格の剥離を妨げ、表層を取り繕った紛い物しか生まれない。


 ――そしてu-aは、そもそも――

 ――この特性と、君達の力を利用すれば――


「死ぬほど読みにくい」


 クセがヤバい丸文字。女子中学生かよ。

 先刻の三叉路で分かれた際、ジャッカル女史から受け取ったとのことだが……ペン字教室行け。


 まあ、兎に角。


「ようやっと目的達成の具体的な方法が開示されたワケだ」


 あっちに向かうだの、あれを倒すだの、逐一ブツ切り。

 あのヅカ女、どんだけ情報を小出しにすりゃ気が済むのやら。


 とは言え。


「ヒルダ。お前のスキル、想像が尽きたら終いだろ。そいつ使えるのか?」


 顎をしゃくり、コピーアウトされた方のu-aを示す。

 よくよく見れば髪の色や長さ、服のデザインなど、節々がオリジナルと異なる。

 恐らく自らの審美感覚に沿わせてアレンジしたのだろう。


「んー、流石に『アリィス・トラオム』単体じゃ厳しいかな。僕の想像力も有限だし」


 予想通りの色良からぬ返答。

 や。それならそれで勿論、打てる手はあるのだが。


「だから後は任せたよ、リゼ」

「えー」


 えーじゃない。





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