435
「はいツキヒコ」
「あァ?」
手渡された一枚の紙片。
開くと、水着姿でポーズを取るジャッカル女史の写真が挟まれてた。
「ごめん間違えた。こっちだった」
「そうか」
「写真返して。懐に仕舞わないで」
ちっ。
――異界に潜む赤子の右目に捉えられた者は、引き摺り込まれた精神の内で、己が影と相見える。
――影とは即ち、本人も知り得ぬ別側面。敗れれば肉体を奪われる、表裏反転の罠。
――赤子の右目に瞳は二つ。魔人とu-aの二人が術中に落ちる。
――心配は無用。通常、影を降すことは至難だけれど、彼等は例外。
――魔人は、その強過ぎる自我が人格の剥離を妨げ、表層を取り繕った紛い物しか生まれない。
――そしてu-aは、そもそも――
――この特性と、君達の力を利用すれば――
「死ぬほど読みにくい」
クセがヤバい丸文字。女子中学生かよ。
先刻の三叉路で分かれた際、ジャッカル女史から受け取ったとのことだが……ペン字教室行け。
まあ、兎に角。
「ようやっと目的達成の具体的な方法が開示されたワケだ」
あっちに向かうだの、あれを倒すだの、逐一ブツ切り。
あのヅカ女、どんだけ情報を小出しにすりゃ気が済むのやら。
とは言え。
「ヒルダ。お前のスキル、想像が尽きたら終いだろ。そいつ使えるのか?」
顎をしゃくり、コピーアウトされた方のu-aを示す。
よくよく見れば髪の色や長さ、服のデザインなど、節々がオリジナルと異なる。
恐らく自らの審美感覚に沿わせてアレンジしたのだろう。
「んー、流石に『アリィス・トラオム』単体じゃ厳しいかな。僕の想像力も有限だし」
予想通りの色良からぬ返答。
や。それならそれで勿論、打てる手はあるのだが。
「だから後は任せたよ、リゼ」
「えー」
えーじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます