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「時にリゼ。俺はどのくらい気を失ってたんだ」
「三分ちょっと」
「長げぇ。家が建っちまう」
「建たないわよ」
状況が動き過ぎてて、絶賛置いてけぼり中。
「説明求む」
「かくかくしかじか」
「成程」
さては真面目に話す気が無いな。
「分かった。ヒルダを締め上げて聞くとしよう」
「どうして締め上げる必要があるのよ」
知るか。
後で適当に考えとく。
「抜剣――『穿式・燕貝』――」
からの、形態変化応用シリーズ第二弾。
「――『
「なんか見たことない技を当たり前みたいに使ってる……」
風を逆巻かせ、廻る剣身。
貫通力の強化と言えば、やっぱ
何より、こうした方が軌道も安定する。
「仰角七十四」
射出体勢良し。
「豪血」
完全索敵領域拡大。周辺環境掌握。標的捕捉。
現深度での推定弾速、マッハ六。
「さあ、堕ち――」
「やめなさい馬鹿」
投擲間際、腕に大鎌を引っ掛けられ、射線がズレる。
樹鉄刀は明後日の方へ飛び去り、星となった。
…………。
「やべぇ。回収のこと考えてなかった」
「御愁傷様」
果心に殺される。
リゼ大明神様に頭下げて空間を繋いで頂き、どうにか手中へと戻った樹鉄刀。
助かった。鬼の形相を晒した果心に八つ墓村スタイルで七日七夜追い回されず済んだ。
やはり必要だな、リターン機能。
と。
「ふーっ、出来た出来た」
念の力場を繰り、ガラス造りと思しき棺を伴い、降り立つヒルダ。
撃ち落とし損ねたか。残念。
「あ、ツキヒコ! 良かった、起きたんだね! 心配したよ!」
ぱぁっと笑顔で抱き着いてくる、猛獣の比ではない危険人物。
焼き菓子に似た甘い匂い。先週頃、リゼも同じ香水を使ってた。
やはり鎧が邪魔だ。損した気分になる。
てか、ここまで嬉しげにされたら流石に良心が痛むわ。
「謝罪のセルフ斬首」
「ぷぎにゃあああああああああっっ!?」
「首を刎ねるのが芸風になりつつあるわね」
「イヤ過ぎるよ、そんな芸風!」
気だるく欠伸するリゼ、半べそで喚くヒルダ。
これが文化の違いか。斬首での謝罪は欧州人に馴染み深いと思ったんだが。
……さて。
「ヒルダ。悪いが、ぼちぼち現状の解説を頼む」
特に、お前の後ろで眠る、二人のu-aに関して。
「うん? ……ああ」
俺の視線を追い、概ねを察したらしいヒルダは、軽く髪を掻き上げる。
次いで。
「片方はコピーだよ。僕の『アリィス・トラオム』は、想像さえ及ぶなら生命だって作り出せる。ガイノイドを命と呼べるかは、人によると思うけど」
事も無げに、そう言った。
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