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 再び倒れ込んだ俺二号は、亡者のように這いずりながら、射殺さんばかりに俺を睨めつけた。

 うーむ、しぶとい。とっくに心臓停まってるのに。ゴキブリかよ。


〈何故……何故、だ……〉

「要領を得ねぇ野郎だな、マジで」


 返事が欲しけりゃ主語を寄越せ、てのが分からんらしい。

 真っ当に聞かれたところで、答えるかどうかは気分次第だけれども。


〈ッ……〉

「焦れってぇ、早よ。あんま余裕ねーんだぞ」


 歪み、軋み、罅割れ、崩れ、砕け、爆ぜる。

 そんな、今にも消え果てそうな、この世界。

 誰の所為だ。俺の所為か。ごめんなソーリー。






〈……オマエ……ずっと……独りだったじゃ、ねェか……〉


 ん。やっとマトモに喋り始めた。

 簡潔明瞭かつユーモア多めで、よろしくね。


〈血が青いってだけで、産まれた時から忌み嫌われ、バケモノ扱いされ……両親の腕に抱かれたことさえ無く……普通なら、数え年が片手を埋めるより先に死んでたような半生を送ったんじゃねェか……〉


 だいぶ髪伸びて鬱陶しい。

 床屋行くの面倒だし、またリゼに切らせよう。


〈寄って来るのは、テメェを怖れて媚売るバカ達だけ……信じられるのは、ヤクザも泣き喚いて地べたに頭こすりつけるほどの暴力だけ……日々の飯も、学校に通うための金も、何もかも独りで用立てて……そんな人生を、ずっと続けて来たんじゃねェか……〉


 リゼの方は『呪胎告知』で余分な髪を削いでるから、いつも整ってるんだよな。

 オシャレのためなら特定危険スキルも精微に使い熟す。努力の方向性が斜め上。

 そういうとこ、嫌いじゃねぇ。


〈なのに……なのに、なんで今更、あんな女を傍に――〉

「話が長い」


 俺二号の頭を踏み潰す。

 ザクロみたく弾けた。


「タラタラ長台詞並べやがって。四十字詰め換算で三行以内に纏めろや」


 それ以上になると、ラノベだったら読み飛ばされるぞ。

 少なくとも俺は読み飛ばす。冗長な説明文とか目が滑る。


 にしても。


「あー、うざってぇ。女々しさ天元突破」


 念願叶った現在いまとなってはクソどうでもいい過去もんを引き摺りまくり。ホントに俺かよ、全く。

 便宜上、二号と呼んでたが、改めて振り返れば違和感ばかり残るわ。


 結局コイツ、なんだったんだ。

 その疑問を解消すべく、某とんち坊主スタイルで考えてみる。


「――すやぁ」


 やっぱ眠いから寝ることにした。

 おやすみ。





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