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〈死ね〉
「おーおー、テンプレ級の没個性的リクエストですこと。つまんね」
向こうに合わせて此方も『豪血』の深度を上げ、八方からの襲撃を捌く。
ふむ。嘗て俺を相手にした連中の視点を直に味わうというのも、中々に得難い経験だ。
が。
〈ッ……ぐ……ぎっ!?〉
「
縦縦横横ブルドッグ。
秒間三千ばかりの攻撃を雑に受け流し、手拍子を入れる形で千ほど大雑把に斬り刻む。
流石に硬いし腕に力が入らねーしで『刃軋』も殆ど通らんが、最後の一撃は断式に切り替え、腰だめにフルスイングかましてやった。
〈ぐうぅ……な、ぜ……何故……赤一色のオマエに、二色のオレが……剣を使うオマエに、徒手のオレが……〉
「あァ?」
強化と硬化を並行させた己が、強化のみの俺に劣る筈が無い。
藤堂月彦の持つ戦闘技術で最も練度の高い徒手格闘を繰る己が、武器を持って戦う俺に遅れを取る筈が無い。
剣の腹で、衝撃が滞留するよう打ち込んだ一撃。
ダメージこそ薄くとも身体が言うことを聞かないのか、片膝つきつつ喀血混じりに呟く俺二号。
それやめろ。ワタクシ戦闘中に膝なんぞ落としません。
つーか。
「今更、赫夜を纏ったところで、俺との差は埋まらねーよ」
初手から既に一分。
感覚能力が跳ね上がる『豪血』発動中の俺にとって、常人の数年と等価値以上の密度を含んだ時間。
「所詮は鏡像か。楽しめそうだと期待した矢先、失望させてくれやがる」
さながら縁日のクジを引いた五歳児が如し心地だ。
はてさて、どう始末を付けてやろうか。
このまま捻っても良いが、無駄に硬く素早いため些か手間を食う。
ダルい。消化試合なぞ長引かせたところで芥子粒ほどの面白味も無い。
かと言って、単に此方も同じ
芸は大事だ。いっそ『深度・参』で、とも考えたが、いまいち気乗りせん。
…………。
「よし決めた」
我が愛刀の、八番目の形態。
本邦初公開と洒落込もう。
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