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「成程」
委細把握。
然らば、くたばれ。
「豪血」
動脈を伝う赤光。
総身に充ちる膂力、研ぎ上がる識覚。
双方が齎す時間感覚の圧縮。緩やかとなる世界の流れ。
「抜剣――『番式・龍顎』――」
激しく燃え盛る炎の揺らぎすら止まって見える只中、籠手を二刀へ移し替える。
更に。
「『
番式の刀身に並ぶ鋸刃を高速振動させ、チェーンソーとしての性質を付与。
形態変化の応用。ほんの今し方に思い付いた試みだが、やってみるもんだな。
「ヴォーパル」
強化された脚力に重心移動を加えた、超音速の踏み込み。
きっかり、切っ尖が届く間合い。
左右から交叉状に斬り掛かる。
八尺様クラスのクリーチャーだろうと、何の抵抗も許さず首を刎ねる速度と攻撃力を備えた一撃。
――しかし。柄越しに返る手応えは、骨肉を裂いた時のそれではなかった。
〈鉄血〉
鋸刃の擦れる高音、爆ぜ散る火花。
青光奔る喉笛に、太刀筋を堰き止められた。
〈いきなりかよ。ゆとりが足りてねェぜ〉
「生憎と我慢弱いタチでなァ」
やはり使えるか。
ま、俺を名乗る以上は当然だ。
至極、想定の範囲内。
〈敵か味方かも分からん相手に、よく躊躇ゼロで斬り込めるな、オマエ〉
「あァ? なに眠てェこと言ってんだ」
番式を片方だけ逆手に持ち替え、再び振るう。
「内なる世界、もう一人の自分との相対」
映画、小説、漫画、アニメ、ゲーム。
あらゆる創作で、腐るほど拝んだシチュエーション。
けれども、だ。
「ブチのめす以外の展開なんざ、見たことねェんだよなァッ!!」
〈だいぶ暴論掲げてる自覚あるか?〉
御託は結構。
そんなことより、次の一閃は俺の『鉄血』強度に合わせた斬り方だ。
さあ、どう出る。
〈――『深度・弐』――〉
袈裟懸けに断ち裂く間際。奴の静脈を伝う青光が一段、深くなった。
先程よりも飛躍的に跳ね上がる肉体強度。
咄嗟、調整を図るも体軸をズラされ、重さに欠ける番式はハウリングじみた音と共に弾かれた。
〈ただ、まあ、正解だ。オレを殺さなきゃあ、オマエは、この牢獄から出られない〉
防御直後、深度を戻し、前傾姿勢を取る俺二号。
〈抜剣――『曲式・火皮』〉
併せて形を変える、向こう側の樹鉄刀。
〈豪血〉
青から赤へと切り替わる『双血』。
〈――尤も、ここでオマエは死ぬんだがな。兄弟〉
僅かな手首の動きを受け取り、四方八方より俺を襲う、刃渡り十メートル前後の薄剣。
その悉くを二刀で以て払い落とし、四つ足となりつつ、口角を吊り上げる。
「ハハッハァ! やれるもんならやってみな、兄弟!」
正味、現状までの経緯は今ひとつ分かりかねるが、細かい理屈なぞ些事。
どうあれ、悪くねぇ趣向だ。ちょっと楽しくなってきた。
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