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虚空を踏み付け、四度、宙を跳ねる。
左腕の人差し指一本で着地し、天地逆転した視界に赤子を捉える。
「ンン?」
無傷。
四散するどころか、痛痒を受けた様子も、そもそも此方の攻撃に気付いた素振りすらも見せず、安穏と眠るばかり。
「間合いを測り損なったかね」
いいや、そんなワケは無い。
音速の百倍以上で動き回るような相手だったら兎も角、浮かんでるだけのカカシだぞ。
どうなってる。考えろ。
駄目だ分からんわ。この場所の独特な空気に五感を乱され、完全索敵が上手く働かん。
天網恢恢疎にして漏らさず、なんてキャッチコピーは返上すべきかね。たった今、初めて使ったけど。
ま、あと十秒あれば感覚のチューニングも終わるが……それまでボケッと突っ立ってるのも間抜け極まる話。
「オーケー。探りがてら、もうひと噛み行っとくか」
指先を軽く弾き、今度は足から再着地。
圧縮鞄に仕舞っておいた大口真神の魔石を取り出し、十爪で以て十面より突き貫く。
「ハハッハァ」
既に二度目。精髄は掴んだ。
いちいち別形態へと移し替えずとも、ごく短い間なら、核式の許容量を超えた莫大なエネルギーを強引に呑ませられる。
そして。
「吐き戻す勢いも、試しにやってみただけの一度目の比じゃねえ」
「ッッ! 総員、離れろ!」
良く通るジャッカルの叫声と併せ、双掌へ熱量を収斂、圧縮。
己の肌が、肉が、骨が焦げ付く感覚。
その痛みの度合いを目盛りに、限界点を推し量る。
そして。水際ギリギリで解き放つ。
「『
リゼに改めさせた技名を口遊む。
前の名は記憶から消え去った。摩訶不思議だなー、うん。
――純粋な力の奔流。
脇道に逸れた性質や効果など持たざる、ただただ破壊のみを齎す一撃。
赤黒い空を、極光が塗り潰す。
広大な円の九割以上が、背後の僅かな空間を除き、無に還った。
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