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「なあ、シンゲンさんよォ」
ジャッカル女史を先頭に往く道中。
破壊の影響で身を隠したのか近くにクリーチャーの気配は窺えず、ただ歩くのも暇だったため、シンゲン氏へと話しかける。
「む? なんだ『魔人』のアンちゃん。てか別に呼び捨てで構わんぞ」
では遠慮無く。
「シンゲン。アンタに聞いてみたいことがあってな」
「そうか! よし、どんとこい! だが因数分解とかは勘弁な!」
んなもん誰が聞くか。
「因数分解なら私が分かりますよぉ。他の定理や公式も大体全部教えられますので、何でも聞いて下さいね」
デフォルメされた二頭身形態でシンゲン氏、いやシンゲンの肩に乗ったカルメン女史が言う。
だから違うっての。天然ボケの相手は調子狂うわ。
「六趣會は一時期、斬ヶ嶺鳳慈と組んでたって聞いたことがある」
「キル……ホウジ? 誰だ、そりゃ」
聞き覚え無いとばかり、首を傾げるシンゲン。
想定外の反応に此方も面食らってると、カルメン女史が助け舟を出してくれた。
「凡次郎さんのことですよ」
「……おお! そう言えばアイツ、スカした名前使ってたな! 凡次郎のくせに!」
斬ヶ嶺鳳慈。本名、
事象革命直後のダンジョン黎明期、まだ
およそ四半世紀前にDランキングが発足されて以降、誰にも一位の座を譲らぬまま死んだ、原点にして頂点。
下らない環境で生まれ育ち、他人に関心など無かった俺が、唯一憧れた相手。
勿論のこと、公開されている戦闘ログは全て見た。穴が空くほど。
ただ、斬ヶ嶺鳳慈が存命だった当時の体内ナノマシンは、五感取得情報の同期率も処理速度も、現バージョンの三割以下。正味の話、あまり参考資料にはならない。
故、実際の彼を知るだろうシンゲンに問う。
俺が最も理解しやすい形で。
「アンタやハガネと、あの人。戦ったら、どっちが強い」
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