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「俺の防具を喰い破ったことは、素直に讃えてやるよ。グレート」


 体内に巡る糸を引き絞り、右脚を接合。

 返す刀、震脚の要領で踏み込み、まだ上手く繋がっていない断面から血を噴き出させる。


「だが。破ろうが燃やそうが溶かそうが壊そうが、意味はねェ」


 瞬く間、深紅から青へと酸化して行く流血。

 それを吸い、同じ色味を帯びるボトムス。


女隷コイツは俺の血で修復する。プラスアルファを重ねた上でな」


 血を浴びるほど強く、硬く、呪わしく、禍々しく、その力を押し上げる。

 即ち鉄火場を抜ける度、死線を越える度、修羅場を潜る度、高まり続ける道理。


 いずれは樹鉄刀同様、我が一部となるだろう。

 そこへ行き着くまで、俺が生きていればの話だが。


「ぅるる」


 元通り――否。少しだけ強度を増す形で、健在を取り戻した装束。

 脚も癒えた。血は幾許か減ったものの、戦闘行為に支障を来す域には非ず。


〈グラルルル……!!〉


 対する大口真神も、腹に穴が空いた程度。かのアステリオスを判断基準とするなら、然したる問題にはなるまい。

 事実、軽快な所作で地へ降り立ち、機を窺っている。


「――『深度・弐』――」


 こっちもこっちで『豪血』を深化。

 身体能力、感覚能力の劇的向上に伴い、完全索敵領域の範囲と精度が増し、脳髄へと注がれる情報量も跳ね上がる。


「半径五キロ圏内の全敵影に接近の意図は感じられず。気兼ね要らずのタイマンだ」


 両腕の樹鉄刀を擦り合わす。

 ギャリギャリと、耳障りな音色が鳴り渡る。


「抜剣――『番式・龍顎』――」


 動脈に伝う赤光を、樹鉄刀表面へと絡み付かせる。


 ――さあ、遊ぼう。存分に殺し合おうぜ。





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