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 榊原リゼ。

 ヒルデガルド・アインホルン。

 ジャッカル・ジャルクジャンヌ。

 シンゲン。

 カルメン。

 キョウ。

 灰銀。

 u-a。

 そして俺、藤堂月彦。


 此度、以上九名で、世界に九つのみ存在する難度十ダンジョンの一角、那須殺生石異界へ乗り込むワケだけれど……差し当たっての問題が一点。


「正規の手続きに依る場合。Dランカーどころか探索者シーカーですらないu-aをダンジョン、それも難度十に踏み入らせることなぞ、原則的に不可能と考えて貰って構わん」


 説明御苦労、ジャッカル女史。

 つまり特別なコネクション必須の裏口ルートか、申請無しで臨む侵入ルートかの二択となるワケだ。


 ――が。ここで更に問題。

 問題と言うか、前提条件。


「そもそもu-aがこと自体、公然にすべきでない。秘密を知る者の数も、可能な限り抑えたい」

「極めて適切な判断です栞様。もし大きく露見した場合、良き未来が訪れ得ぬことは、視るまでもありませんので」


 となれば結局、横紙破りしかねぇってオハナシ。

 まさか初の難度十ダンジョンが、法を冒した上でのアタックになるとは。


「気が進まんぜ」

「わっるい顔。どう見てもノリノリなんだけど」


 ふははははは。わーい、難度十だー。


「案ずるな『死神』殿。規則に明記されているのは『無許可でのダンジョンゲート通過を禁ずる』だ」

「私が繋いだ道を通る分には合法とでも言いたいの?」

「イグザクトリー」


 曇りなき眼で頷くジャッカル女史。

 百歩譲っても脱法だろ、それ。


「クハハハハッ! 無問題、無問題! 万一に備え、体内ナノマシンの不活性剤も持参した! ここでの会話も含め、不都合な記録は何ひとつ残らん!」


 後ろ暗さ爆裂な準備の良さだなオイ。

 ますます以て脱法。


「……ねえ月彦。やっぱり帰っていい?」


 えー。





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