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「さて諸君。少々アクシデントに見舞われたが、面子も揃ったことだ。始めよう」
キョウ氏の隣へ腰掛け、彼の肩に頭を預けながら手を叩くジャッカル女史。
いや距離感。曲がりなりにも妻帯者相手のディスタンスじゃねぇ。
カルメン女史も二頭身形態でとは言え膝に乗りっぱだし、
てか、そろそろ灰銀女史の拘束を解いてやれよ。
ほっといたら手脚腐るぞ。固く縛り過ぎ。
――ところで。
「絶賛マタニティなミセス・レタスは兎も角、博多の女……五十鈴は来ないのか? てっきり参加するもんだと」
「彼女は多忙でな。居てくれれば相当な戦力になったんだが」
そいつは残念。
あの博多弁でボソボソ話す特徴的な喋り方、割かし気に入ってるのに。
「向こうも大層残念がってたぞ。推しの勇姿がーとか」
オシ?
そこそこ良い歳だろうに、アイドルの追っ掛けでもやってんのか?
別にいいけど。趣味とは年齢性別に囚われず、自由であるべきだし。
「――と、予めの段取りは以上だ。尚、現場での対応に関しては、各々の裁量を重んじるものとする」
成程。
「要は高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処せよってワケだな」
俺の軽口に対し、その通り、とウインクを添えて返すジャッカル女史。
「……
「ホント申し訳ない……けど、ジャッカルも勝算ありきで計画を組んでる……筈」
「愚者と賢者は表裏一体。数十年の付き合いだ、もう慣れた。と言うか諦めた」
リゼ、キョウ氏、いつの間にか自力で拘束を抜け出した灰銀女史の順で並ぶ辛辣な感想。
他の面々も基本的に苦笑いだったり呆れ顔だったりと、概ね渋めなリアクションだが、俺ぁ嫌いじゃないぜ。行き当たりばったり。
「ハハッハァ。良いな、テンション上がってきた」
「ねえ月彦。そもそも私、今回の件には賛成してないんだけど」
今更、何を仰るウサギさん。
膝丈パーカーのフードに付いてる長耳、引っ張っちゃうぞ。
「心配するなよ。ちゃんと約束は守るさ」
それに。
「賛成こそしねぇが、反対もしねぇ。そんでもって、いざ参るとなれば、着いて来てくれるんだろ?」
そんな問い掛けへの返答は無し。
眉間に皺を寄せた仏頂面で、此方を睨むばかり。
「そーゆーとこ、好きだぜ相棒」
「……あ、そ」
心臓の跳ねる音と、俺の体内からは決して響かない音が、混ざって聴こえた。
さぁて、と。
「そんじゃ皆の衆。ぼちぼち行こうぜ――
――難度十ダンジョンに、よォ!」
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