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「この度は、大変お世話になりました」
疲れ果てた様子で謝礼を並べつつ、俺とリゼに深く頭を下げるキョウ氏。
……なんか言いにくいわ、キョウ氏。教師とかキョンシーみたいで。
ま、声に出して呼ぶワケでもねーし、いいか別に。
「ひとまず自己紹介を。六趣會『人間道』キョウこと
こいつは丁寧にどーも。
「先達て妻が仕出かした件も含め、藤堂さんには多大なる御迷惑を重ねるばかりで……」
素晴らしく堂に入った謝罪姿。今日まで如何な人生を歩んだか、容易く想像出来る。
あんなのが嫁とか、地べたに頭を擦り過ぎて鼻が平らになっちまいそうだ。
「当方の不用心が招いた自業自得の尻拭いまでさせてしまい……」
しかし流石に、ちょっとばかり慇懃が過ぎやしませんかね。
ごめんなソーリー、ぐらいで良くね?
「伏してお詫びを……」
うえぇ。六人全員Dランキング制度の発足当初からリストに載ってるようなトップパーティの成員が、己の半分も生きてない若造相手に腰ひっくぅ。
そりゃ仲間の威光を借りてるだけの狐野郎なら得心も行くが、アンタは違うだろ。ペコペコすんな気持ち悪りぃ。
焼きそばパン五秒で買って来いとか宣うくらいの風格を見せろよ。
今期九位、並びに十位。
そんな称号相応の戦闘能力を有したカルメン女史やジャッカル女史より、明らかに強いんだから。
「ぅるる」
息遣いや所作などから読み取れる力量は、どんなに低く見積もっても、交流会でボコった
恐らくコイツが、ハガネとシンゲン氏に続く六趣會の実質的な三番手。
…………。
軽く。ほんのかるーく、ちょこーっと腕試しをば――
「月彦」
だらりと垂らした拳を握り締める間際、リゼに腕ごと抱え込まれる。
機先を制されてしまった。魂の色や揺らぎで心理状態が直接視認可能って結構ズルい。
「噂は、かねがね。会えて光栄だ、ヘル・ユキシロ」
訥々と並んだ謝罪も一段落ついた頃合、おもむろにキョウ氏の手を取るヒルダ。
琴線に触れるタイプの美青年だったらしい。前々から思ってたけど、お前ホントにドイツ人か? イタリア人の間違いじゃないのか?
「僕はヒルデガルド・アインホルン。ヒルダと呼んでくれたら嬉しい。早速だけど今晩空いて――」
「えいっ」
じりじり躙り寄る、見た目だけはパーフェクトなバイセクシャル好色魔。
されど二頭身形態でキョウ氏の膝に陣取っていたカルメン女史が、その口を凍らせることにより見事撃退。
「キョウくんはナンパ禁止でぇす。嫉妬深くて粘着質で執念深い奥さんに殺されちゃいますよぉ?」
「――ッ! ――――ッッ!!」
ふむ。護衛活動及び有難い忠告お疲れ様だが、勢い余って鼻まで塞がり、暴れ苦しむヒルダの耳には、その諫言も届いていまい。
てか死ぬんじゃね。ウケる。
「ッッ!」
あ。指で喉に穴開けて窒息を回避しやがった。
考え付いても実行するか普通。頭おかしい。
「自分だって同じ状況なら、やるでしょ」
「そりゃ当然やるけども。躊躇う理由ねーし」
人の心を読むなよリゼちー。
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