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「シンゲン! カルメン! 君達二人が付いていながら、なんて体たらくだ!」
カラオケボックスのパーティールームに、ジャッカル女史の声が甲高く鳴り渡る。
マイク使って怒鳴るなよ。超うるせぇ。
「あれほど灰銀から目を離すなと言い含めてあっただろう!? キョウの安全を条件に連れ出す許可を得ておいてこのザマとか、全員纏めてハガネに殺されるところだぞ!」
鎖と防刃布で簀巻きにし、足元へ転がした灰銀女史を指差しながらの逼迫した語調。
そこに冗談めいた声色は窺えない。まあ、あの似非ロリなら実際やりかねんわな。
「面目ねぇ」
「灰銀ちゃん、かくれんぼ上手ですから……」
現に、豪放磊落な気性のシンゲン氏が大袈裟だと笑い飛ばすでもなく、筋骨隆々な身体を丸め込み、低頭している。
マイペースかつ能天気なカルメン女史も、スレンダーな肢体をデフォルメされた二頭身まで縮め、へにゃってる有様。
…………。
は?
「ちょ。ちょい、ちょいちょいちょいリゼ。何あれ、なんだあれ」
「クレス大叔母様、私より身体柔らかいのよ」
果たして、柔いとか硬いとかで片付けていい問題なのだろうか。
だって二頭身だぞ。大きめのリュックなら丸ごと収まりそうなサイズだぞ。
「失礼」
「ふぇ?」
好奇心に抗えず、持ち上げてみる。
成人女性の範疇を逸脱した、今の外見相応な軽さ。
しかも、低反発枕をモチモチの皮で包んだような触感。
頭まで柔らかいぞ。骨どこ行った。
「スキル、か? スキル、だよな?」
「いえ、私が持ってる異能は『アイスエイジ』だけですけどぉ」
交流会の時、周囲を氷漬けにしたやつか。
改めて思い返せば、アレもアレで随分と違和感のある現象だったが……スキルじゃ、ない?
「摩訶不思議だ。
「どうでもいいけど大叔母様を下ろしなさいよ。白昼堂々セクハラとか、そこでのたうち回ってる銀髪女と変わんないわよ」
超絶心外。けど尤もな御意見。
訴訟にでもなったら不利は確実なので、取り敢えず、ぽいっと放り捨てた。
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