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現在、右腕を絡め取られた拘束状態。例によって力尽くを図ればリゼが怪我をする組み方のため、下手に動けねぇ。
傍から見れば仲睦まじい恋人同士のように思えるかも知れんが、実情はリード付きのペットみたいなシチュエーションだ。
色々と不本意。
「ちょい対応がオーバーじゃありませんかね? 流石に、もう大人しくするぞ」
今日のところは。
「信用して貰える立場だと思ってるの?」
ぐう正論。なんも言えねぇ。
つか鼓動はっや。いつものことだが、大丈夫かオイ。
「ところで他の連中は何処に消えやがった。団体行動の取れん奴等め」
「自己紹介?」
こてん、と首を倒すリゼ。
腹立つ仕草だな、今晩覚えてろよ。ココアに入れる砂糖の量を大さじ四杯から三杯に減らしてやるぜ、ふはははは。
「ま、騒がしい方に進めば見付かるだろ。自重ってもんを母親の胎に置き忘れたような奴等だし」
「自己紹介」
黙らっしゃい。乳揉むぞ貴様。
四半秒だけ『豪血』を使い、押し広げた完全索敵領域で以て大まかなアタリを付ける。
「お。居た」
「ホントに渦中ね」
やや遠巻きに彼等を眺める数人の野次馬、その中心。
黒髪に赤いメッシュを入れた、どこか幸薄そうな印象の男。
くすんだ銀髪、病じみた白皙と、やたら色素の薄い女。
双方共々、右手には俺と同じ
直接の面識こそ無いが、ジャッカル女史から貰い受けた画像データで見知った顔ぶれ。
「『人間道』キョウと『修羅道』灰銀。これで六道コンプか」
「なんか言い争ってない?」
困り顔で身振り手振り話す『人間道』。表情ひとつ変えず佇んだまま、唇だけ素早く動かす『修羅道』。
言い争う、と表現するには些か一方的な雰囲気だが、口論の最中ではある模様。
ちなみに俺の耳なら、この距離でも内容はハッキリ聴こえている。
「男の方が結婚を迫られてるな。あんな涼しい顔しといて、だいぶ熱烈に」
「……『人間道』って既婚者じゃなかった? しかも相手は同じ六趣會の『畜生道』」
イエス。事実、左手薬指にハガネが嵌めてたものと酷似した指輪も見て取れる。
パーティ内での略奪愛か。たった六人のくせ、中々に複雑な人間関係だ。
「おお。あの銀髪、押し倒したぞ」
それだけに飽き足らず、抵抗する『人間道』を抑え込み、服を脱がそうとしてやがる。
まさか、こんな所でコトに及ぶ気か。
「ロックだな。フェスティバル級の」
「馬鹿言ってないで止めるわよ」
えー。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて云々とか言うじゃん。
ほっといた方が後々も含めて面白そうだぞ。
「アレの関係者と思われたいワケ? 警察沙汰になったら最悪、ここに居る私達まで共犯扱い。
よし止めよう。速やかに、慎ましやかに、全力でな。
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