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「麓のショッピングモールに仲間を待たせてる。まずそちらに向かおう」


 険しい山道をピンハイヒールで事もなげに下りつつ、あっけらかんと言い放つジャッカル女史。


「じゃあ最初から、そっちを集合場所にしときゃ良かっただろ」


 要らん手間かけさせやがって。

 ナメてんのか。返答如何じゃ叩きのめすぞ。


「辺鄙な山中の方が! 秘密の作戦って感じがして! 集うべき場に相応しい!」


 困った。一理ある。


「……そういう事情なら……まあ、仕方ねぇか」

「え。ツキヒコ、今ので納得しちゃうの?」

「基本こーゆー奴なのよ」

「無駄とは思いますが、専門機関での受診を推奨します」


 煩いぞ外野ども。






 リゼが空腹気味でスキル使用を嫌がったため、地道に歩き続けること暫し。

 段々と近付く人の気配、文明の痕跡。あと五分もあれば街に出られるだろう。


「あァ? 何やってんだロボ子」

「u-aです、腐れ外道。そして質問に答えるなら、少々の変装を」


 木々の隙間からアスファルトの車道が覗き見え始めた頃合、手慣れた様子で髪型などを弄るu-a。

 ……すげぇな。だいぶ雰囲気変わったぞ。


「ふむ、それは賢明。何せ今をときめくシンギュラリティ・ガールズの一機が不用意に往来を彷徨こうものなら、警察騒ぎに発展しかねん」


 とはジャッカル女史の弁。

 熱烈な追っかけだの良からぬ連中だのが、砂糖に群がる蟻の如く押し寄せるってか。


 俺も覚えがある。自称ファン、アンチ、誘拐犯、殺し屋。どいつもこいつも暇過ぎ。

 SRC直後やリゼのスキル発覚時などは特に酷かった。なんなら一昨日あたりもリゼを攫おうとした連中に襲撃された。

 そいつ等は四肢を砕いて太平洋の真ん中に飛ばしてやった。各々が複数のスキルを習得したスロット持ちだったし、通信機器は壊さないでやったし、体内ナノマシンを使えば位置情報の発信も出来るから、死にはしないだろ。多分。


「人気者も大変だなオイ。一万円級の魔石あるぞ、食うか?」

「要りません」


 思っくそ舌打ちされたよ。

 このガイノイド、俺へのアタリが妙に強くね? 別に構わんけどさ。

 …………。


「なあ。お前そう言えばさっき、サラッと毒吐かなかったか?」

「気の所為かと、ド腐れ外道」


 とぼけるなら、せめて隠す努力くらいしろ。






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