385
「麓のショッピングモールに仲間を待たせてる。まずそちらに向かおう」
険しい山道をピンハイヒールで事もなげに下りつつ、あっけらかんと言い放つジャッカル女史。
「じゃあ最初から、そっちを集合場所にしときゃ良かっただろ」
要らん手間かけさせやがって。
ナメてんのか。返答如何じゃ叩きのめすぞ。
「辺鄙な山中の方が! 秘密の作戦って感じがして! 集うべき場に相応しい!」
困った。一理ある。
「……そういう事情なら……まあ、仕方ねぇか」
「え。ツキヒコ、今ので納得しちゃうの?」
「基本こーゆー奴なのよ」
「無駄とは思いますが、専門機関での受診を推奨します」
煩いぞ外野ども。
リゼが空腹気味でスキル使用を嫌がったため、地道に歩き続けること暫し。
段々と近付く人の気配、文明の痕跡。あと五分もあれば街に出られるだろう。
「あァ? 何やってんだロボ子」
「u-aです、腐れ外道。そして質問に答えるなら、少々の変装を」
木々の隙間からアスファルトの車道が覗き見え始めた頃合、手慣れた様子で髪型などを弄るu-a。
……すげぇな。だいぶ雰囲気変わったぞ。
「ふむ、それは賢明。何せ今をときめくシンギュラリティ・ガールズの一機が不用意に往来を彷徨こうものなら、警察騒ぎに発展しかねん」
とはジャッカル女史の弁。
熱烈な追っかけだの良からぬ連中だのが、砂糖に群がる蟻の如く押し寄せるってか。
俺も覚えがある。自称ファン、アンチ、誘拐犯、殺し屋。どいつもこいつも暇過ぎ。
SRC直後やリゼのスキル発覚時などは特に酷かった。なんなら一昨日あたりもリゼを攫おうとした連中に襲撃された。
そいつ等は四肢を砕いて太平洋の真ん中に飛ばしてやった。各々が複数のスキルを習得したスロット持ちだったし、通信機器は壊さないでやったし、体内ナノマシンを使えば位置情報の発信も出来るから、死にはしないだろ。多分。
「人気者も大変だなオイ。一万円級の魔石あるぞ、食うか?」
「要りません」
思っくそ舌打ちされたよ。
このガイノイド、俺へのアタリが妙に強くね? 別に構わんけどさ。
…………。
「なあ。お前そう言えばさっき、サラッと毒吐かなかったか?」
「気の所為かと、ド腐れ外道」
とぼけるなら、せめて隠す努力くらいしろ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます