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「愛らしい……どうかな、お嬢さん。夜景の綺麗なラウンジでシュヴァルツビールを飲み交わしながら、今後の世界情勢について熱く談義でも」
好みの美男美女と見れば口説かずには居られぬ性分なヒルダが、誘蛾灯に集る羽虫の如く、u-aの手を取る。
アレだ。やっぱ、つむぎちゃんと甘木くんには絶対会わせられんわ、コイツ。
「謹んで遠慮致します、ヒルデガルド・アインホルン様。私の躯体は飲食こそ可能ですが、アルコール摂取には対応しておりませんので」
静かに振り払われる手。フラレたか。
「脈アリだね」
いや、ねぇだろ常考。
もし本気で言ってるなら、思考回路めでた過ぎ。
「つーか引っ込んでろヒルダ。話が進まん」
「ふふっ、ヤキモチかい? 心配しなくても君を蔑ろになんてしないよ、ツキヒコ」
しばくぞ。
「ヒルデガルド・アインホルン様。榊原リゼ様。本日は貴重な時間を割いて頂き、ありがとうございます」
機械ゆえの、ガイノイドゆえの一糸乱れぬ所作で、深々と頭を下げるu-a。
…………。
「いや俺は? 今、意図的に外したよな絶対」
「早速で申し訳ありませんが、用向きに移らせて頂きたく」
「おい無視すんな」
シカトはオールト雲条約で禁止されてる、みたいなことを少し前に吉田も言ってたぞ。
「――待ちなさい」
あからさまなu-aの無礼を見かねたのか、どことなく険しい眼差しで、リゼが制止をかける。
いいぞ、ガツンと物申せ。こちとら
「月彦の馬鹿がロクな説明も寄越さないから今ひとつ状況を掴めてないけど、まあ、それはいいわ」
別に俺への態度を咎めるとかではなかったっぽい。
分かってたけど。そんな殊勝な女じゃねーし。
「用向きとやらの前に。ひとつ答えなさい」
「貴女の問いは既に承知致しております。どうぞ、榊原リゼ様」
立ち上がり、少しだけ身を乗り出すリゼ。
そして、相変わらず険しい眼差しで……否。
何かを見定めるように、u-aを凝視しながら。不可解を乗せた声音で、淡々と問う。
「アンタ。ロボットなのに、なんで魂があるの?」
「正確には有機無機複合アンドロイドですけれど……そちらも含め、時の許す限り、話させて頂きます」
「取り分け、そう。皆様方が持つ、現代社会を崩壊させうる危険性について」
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