383・閑話16






 これは。私が視た、少しだけ未来さきの出来事。

 幾重にも枝分かれた、無限に等しい道筋。

 その、ひとつ。






「抜剣」


 強靭な筋骨にて形成された両前腕を覆う、樹木と金属の性質が混ぜ合わさった武器。

 銘を『樹鉄刀・月齢七ツ』。後世で『十三の牙』に数えられる絶剣が、主の意思を受け、在り方を変える。


「『縛式・纏刀赫夜』」


 待機形態の籠手から、最大出力形態たる鎧に。

 その変質だけで著しくエネルギーを食い散らかすも、最新鋭のイージス艦すら稼働させられる大型魔石にて、一回分を賄う。


 併せて。


「豪血――鉄血――『深度・弐』――」


 動脈に伝う赤光。静脈を奔る青光。

 半ば己と同一化した得物を纏った時のみ可能な、本来なら両立叶わぬ『豪血』と『鉄血』の並行発動。

 更に。それ等は習得者たる藤堂月彦の五体を突き抜け、樹鉄にまで絡み付き、強化と硬化の効力を及ぼす。


 攻防速、悉くが異質な領域まで昇り詰めた姿。

 藤堂月彦が擁すカードで、この埒外を凌ぐジョーカーとなると、私に視える限りでは『深度・参』か、あの危険極まるのみ。


「ハハッハァ」


 諸手をついた、四足獣に近い構え。

 情報過多により脳が焼き切れてもおかしくないほど研ぎ上がった五感で以て、六人の超常者達を捉えた怪物は……嗤った。


「さあ、さあ、さあ! 世界を救いたけりゃあ、遊んでくれよォ――






 ――六趣會ッッ!!」





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